土地が危険な持ち物である3つの理由【土地のリスクと法的責任とは?】

制度の解説

はじめに

 今日、土地は資産ではなく、取扱いが難しい負動産といわれる時代になりました。

 例えば、お子さんに手に負えない土地を残してしまうと、お子さん達には次のような問題が生じます。

 ・相続紛争(負動産の押し付け合い)の原因になる。
 ・資産全体が膨らみ相続税が余分に掛かる。
 ・固定資産税の支払が必要になる(空き家を放置すると増税の可能性も)。
 ・定期的な管理(草刈り等)が必要になる
  (管理しないと空き巣・治安悪化・近隣トラブルのリスクも)。
 ・被災時・事故時に復旧対応や賠償対応が必要になる(例:熱海市の土砂災害の件)。

 とりわけ、最後の被災時に復旧対応や賠償対応が必要になるという点は、弁護士から見ても決して無視できるものではなく、土地を所有する方は十分に注意する必要があります。

 今回の記事では、土地が危険な持ち物である理由を解説します。

この記事を書いた弁護士

弁護士 荒井達也 群馬弁護士会所属

日弁連所有者不明土地WG幹事(2018-2022)、前橋市空家対策協議会委員を務める。著書『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』(重版5刷)等で相続土地国庫帰属制度を解説している。

土地が危険な持ち物である3つの理由

理由①土地所有者の責任は重い!

 まず、法律上、土地の所有者は重い責任を負うという点を押さえておく必要があります。

災害時の撤去責任

 まず、相続等で自分が所有している土地が災害で土砂崩れを起こし、民家に土砂が流れ込んだ場合、土砂の撤去責任は誰が負うでしょうか?

 結論としては、基本的に自らの費用と責任で土砂を撤去する必要があります(日本弁護士連合会災害復興支援委員会編著「改訂版 弁護士のための水害・土砂災害対策Q&A」(第一法規、2019年)76頁)。

 例外的に責任が否定される可能性や大規模災害の場合に自治体が公費で撤去してくれる可能性もありますが(日弁連・前掲書76頁)、大規模災害が増加する中で、このような例外的な可能性に期待するのは少々楽観的過ぎると思われます。

損害賠償責任

撤去責任とは別問題!

 また、土砂崩れによる被害を予想できた場合には、損害賠償責任を負う可能性があります。

 なお、これは先ほど述べた撤去責任とは別問題です。

 もちろん、未曾有の大災害の場合、裁判所が「今回の被害は予想できなかった」と認定し、損害賠償責任を否定するケースもあると思われます。

 他方で、後述するように、近年、大規模災害が増えていることからすると、裁判所が簡単に責任を否定してくれるかは微妙なところです。

多額の賠償責任が発生する可能性も

 なお、損害賠償責任が認められた場合、いくらくらいの支払義務が発生するでしょうか?

 この点は、実際に発生した被害額に左右されるため、ケースバイケースになります。

 そのうえで、一例を挙げると、家屋の倒壊により隣接家屋が全壊し、家屋の居住者3名が死亡した場合、損害額は2億円になる可能性があります(公益財団法人日本住宅総合センター「 空き家発生による外部不経済の損害額の試算結果(その2) 」より)。

 実際に裁判になった事例として、次のようなものがあります。

 すなわち、過去に数回程度しか発生したことがない規模の集中豪雨により発生した土砂崩れにより近隣住民8名が死亡した災害につき、山の中腹に設置されていた観光リフトの設置管理会社に多額の損害賠償責任が認められた事例が実際にあります(静岡地裁平成2年2月9日判例タイムズ721号84頁)。

 この事例では、5000万円近い損害賠償が認められていますが、災害が起きたのは昭和49年であるため、現在の物価水準からすると、現在同じような事件が起きた場合は、より高額な賠償額が認定される可能性があるといえます。

刑事責任

 また、可能性は必ずしも高いとはいえませんが、土地の管理状況が不十分で、近隣住民の生命身体に被害を及ぼした場合は刑事責任が問題になる可能性があります。

 実際に、多数の死者・行方不明者を出した熱海市伊豆山の大規模土石流の事件では、土地の所有者等が業務上過失致死容疑で強制捜査を受けています。

 なお、熱海の被災地の現状は次のページからもよくわかりますのでご紹介いたします。

 日本経済新聞│熱海土石流1年 ドローンで見た被災地のいま

理由②大規模災害が増えている!

日本は災害の国?

 次に、土地が危険な持ち物である理由として、近年大規模災害が増えているという点を挙げることができます。

 日本は、もともと、国土の約7割を山地・丘陵地が占めています。

 また、河川が急勾配で、降った雨は山から海へと一気に流下します。

 そのため、梅雨や台風により大雨が降ることで、洪水や土砂災害が発生しやすいという特徴があります。

最近は大雨・集中豪雨が増加

 とりわけ、近年、大雨や集中豪雨が増えています。

 大雨については、10年前の約1.7倍の日数となっており、集中豪雨については、50年前と比較すると約1.4倍となっているといわれています。

土砂災害も増加

 併せて土砂災害も増加しているといわれています。

 2000年(平成12年)以降では、2004年の台風被害、東日本大震災等の地震災害、令和元年房総半島台風や令和元年東日本台風に伴う洪水・土砂災害等、毎年、多くの自然災害が発生しています。

 自然災害による死亡者数・行方不明者数についても、東日本大震災をはじめとして、甚大な被害をもたらしているといわれています。

不備のある盛り土も多数あり

 なお、熱海市の土石流発生後に国が行った調査によると、不備のある盛り土が全国に1089カ所あるとのことです。

 

日本経済新聞│熱海土石流1年 ドローンで見た被災地のいま
https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00001690Y2A620C2000000/#t3

国の調査で客観的に裏付あり

 以上については、国が作成した国土交通白書に詳細に記載されています。要するに、なんとなくの感覚ではなく、国が調査した客観的なデータに基づくものということです。

理由③土地の管理は大変

 最後に土地の手入れは大変という点が挙げられます。

 きちんと管理を行っていないと近隣に迷惑を掛けたり、二次災害に繋がったりしますし、問題が起きた際に責任を問われる可能性が高くなります。

 管理が大変という点については、私の身近でも、山の樹木が繁茂し、近隣に迷惑を掛けていたため、業者に頼んで対応したところ、何十万円もの費用が掛かったというケースがあります。

 また、実家等の建物があると管理は更に大変です。

 例えば、女優の松本明子のご著書「実家じまい終わらせました!」(祥伝社、2022年)によると、高知県のご実家の維持管理費は年間27万円になったそうです。

【内訳】
 水 道 代 約1万2000円
 電 気 代 約8万円
 固定資産税 約8万
 火災保険料 約10万円
 合   計 約27万円

 この点は実際の生の声を聞くとわかりやすいと思いますので、土地だけではなく建物がある場合を含め、負動産を相続した方の苦労話をいくつかご紹介いたします。

負動産を相続した方の苦労話

【事例1】空き家の管理は大変!お金は掛かるし、虫やネズミも…

亡くなった親の家が田舎にあったのですが、亡くなってすぐ相続の話になり、とりあえず家を相続することになりました。
ただ、私自身、都市部に世帯をもっており、相続しても、そこに住むわけには行かず、しばらくそのまま放置していました。
その間も、固定資産税は徴収され、光熱費や水道の基本料金も取られていました。
不動産自体は築30年ほど経っておりそこまで老朽化もしていなかったのですが、しばらくすると、湿度が増し、カビがいたるところに生えていました。また、ねずみや虫がいて、動物の棲家のようになっていました。
もちろん、実家に帰って来た時に1回は必ず鍵を開けて換気し、掃除をするなどを行なっていました。
結局、相続したものの、実際は空き家のような感じになってしまい、固定資産税、基本料金は取られるだけとなっていたためとても困ったし、家を維持するのに非常に苦労しました。

相続した山に行くのも一仕事、伐採費用は土地の値段以上…

親から山林を相続したのですが、その山林が山奥にありました。最寄りバス停は車で1時間、田舎過ぎてインターネットの地図アプリでは表示されないという始末です。
実際に現地を見に行こうと思っても、地図アプリで表示されない田舎だと、カーナビにも表示されません。なんとか実際に現地に行ってみると、車では途中までしか行けず、相続した山林に行くためには他人の山を通らなくてはならない状況でした。
車を降りたら、ひたすら獣道を進みます。生前、父親からは相続した山の頂上からは都心のビル群が見られると聞いていたのですが、他人の山を通り抜けるのにも大変で、山頂どころではありませんでした。
元をたどれば、相続した山林は元々祖父のものでしたが、祖父の家を引き継いだ叔父とは疎遠のため、山林の管理を頼めないという問題もありました。
売りたくても仲介をしてくれる不動産屋が近くになく、都心の不動産に頼んでみると鼻で笑われました。
近隣の方から「木を伐採しないと大変なことになるぞ」と言われため、伐採費用を調べると、相続した山林の価格よりはるかに高額で大変困りました。

実家の掃除…朝6時に出て戻るのは夜10時

私が相続した実家は、自宅から車で4時間ほど離れたところにあります。
年に2回ほどお墓参りの際についでに立ち寄って管理するということを続けています。
やることは草刈りをしたり、ご近所様にご挨拶をしたり、実家内の掃除をしていました。
その実家に泊まることはできないことはないですが、汚くてあまり泊まりたいとは思わないので、日帰りで帰ることにしているのですが、車で朝6時に家を出て帰って来るのは夜の10時ぐらいという過酷な日程なので、とても大変です。そのような管理をしないようにしたいと考えておりました。
また、どんどんと家が古くなってきており、その後家がさらに古くなってしまうと倒壊などの危険性も考えなければならないような家でした。
できるだけ早く管理を他の人に任せることや、それ以外の方法はないかなど大変悩みました。

 これらは、ほんの一例で、これ以上に苦労されている方も多数いらっしゃるかと思います。そういった方は、当サイトまで情報をご提供いただけますと幸いです。

おわりに

今回は、土地が危険な持ち物である理由として、①法的な責任が重い、②大規模災害が増えている、③土地は管理が大変という点を解説しました。

 もし、この記事が「わかりやすい」「勉強になった」と思った方はSNS等で共有していただけると、とてもうれしいです。

 なお、この制度以外にも不要な土地を手放すための制度について、次の記事で解説していますので興味がある方はぜひご覧ください。

 【2022年最新版】いらない土地を賢く手放す方法5選

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弁護士 荒井達也 群馬弁護士会所属

日弁連所有者不明土地WG幹事(2018-2022)、前橋市空家対策協議会委員を務める。著書『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』(重版5刷)等で相続土地国庫帰属制度を解説している。無料相談は私が直接対応いたします。

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