【何が違う?】相続土地国庫帰属制度と土地所有権の放棄等の隣接制度の違い

はじめに

 2021年4月、相続土地国庫帰属法が成立し、不要な土地を手放して国に引き取ってもらえる制度が創設されました。この制度は、2023年4月頃から利用できるようになる予定です。

 いらない土地を手放す方法に関しては、これまで土地所有権の放棄が可能か?という論点がありましたが、今回は、この土地所有権の放棄をはじめとする隣接の制度と相続土地国庫帰属制度の違いについて解説したいと思います。

土地所有権の放棄との違い

相続土地国庫帰属制度と土地所有権放棄のそれぞれの特徴

相続土地国庫帰属制度の特徴――国の承認が肝

 相続土地国庫帰属制度は、不要な土地として申請があった土地のうち、法務大臣が承認したものを国庫に帰属させるという制度です。

 要するに、国(法務大臣)の承認が制度の肝になっているわけです。

土地所有権放棄の特徴

 他方で、土地所有権の放棄は、権利の放棄は個人が自由にできるという発想を基礎に置いた制度です。実際、民法では、所有権以外の物権や債権という権利について、権利者は、原則として自由に権利を放棄することができるものとされています(民法第268条第1項,第287条,第519条等)。

 ただ、土地所有権の放棄については,所有者が本来負うべき義務・責任や管理コストを国に押し付ける側面があり、所有権の放棄が権利濫用となり認められない場合があるのではないかと指摘されていました。実際、土地の所有権を放棄したと主張する者が国に土地の引取りを求めた裁判で、裁判所が土地所有権の放棄は権利濫用に当たり許されないと判示したものがあります(広島高松江支判平成28年12月21日)。

法改正時の議論――土地所有権放棄制度の断念

 上記の土地所有権の特徴を踏まえ、先般の法制審議会民法・不動産登記法部会(法改正を検討する法務省の審議会)において、土地所有権の放棄が権利の濫用により制限される場合はどういう場合か?逆に言えば、土地所有権の放棄が認められる場合はどういった場合か?という問題意識で議論がなされてきました。

 具体的には、不動産の所有権は基本的に放棄することができないとしたうえで、新たに土地所有権の放棄に関する法律を制定し、土地については、一定の要件を満たし、審査機関による認可がされた場合に、所有権放棄を認めるという制度の創設が規律を導入することが議論されました。

 しかし、このような建て付けで法改正をすると、土地とともに動産や建物についても放棄の可否などについても規定を置く必要が出てきてしまいます。

 ただ、動産や建物の放棄については、これまであまり議論がなされてきておらず、様々な混乱が生じることが懸念されました。

 そこで、最終的に、土地所有権放棄の制度ではなく、端的に、国の処分で不要な土地を国に帰属させる制度(相続土地国庫帰属制度)が創設されることになりました。

結局、土地所有権の放棄はできるの?

 ちなみに、相続土地国庫帰属制度の創設後も、民法の解釈として土地の所有権の放棄ができるかという論点が残ることになります。ただ、今回、相続土地国庫帰属法が成立したことにより、所有物の処分は法令の制限内においてのみすることができると定める民法206条の解釈として、この相続土地国庫帰属法の枠外で土地所有権放棄はできないという方向になっていくと考えられます。

よくある誤解!この制度は土地や建物を国に寄付できる新制度なのか?

 なお、相続土地国庫帰属制度のことを「土地や建物を国に寄付できる新制度」と理解されている方がいらっしゃいますが、違います。

 まず、「建物」については国は引き取りませんし(制度の対象外)、「寄付」という点も異なります。「寄付」は、一般的に手放す側と引き取る側の間の契約(贈与契約)により行いますが、相続土地国庫帰属制度は手放す国民と国が契約を結ぶのではなく、国が審査を行った上で国の行政処分で土地を引き取るという制度です。

相続放棄との違い――より好みができるか?

相続土地国庫帰属制度の特徴――より好み可能

 相続土地国庫帰属制度は、相続した財産の中に不要な土地が含まれており、かつ、法律で定められた要件を満たす場合に個別に法務大臣の承認を受けることによって国庫に帰属させることができるという制度です。

 この制度では、相続人が自分がほしい財産は手元に残して、不要な土地だけを国庫に帰属させるということができます。

 要するに「より好み」ができる制度ということです。

 ただ、不要な土地のみを手放すことに関しては、国への管理コストの転嫁やモラルハザードのおそれがあることから、相続土地国庫帰属法に定める様々な要件をクリアする必要があるという点に注意が必要です。

相続放棄の特徴――全か無か

 これに対して、相続放棄は、相続人が一定期間内に家庭裁判所に申述をすることで相続財産の一切を承継しないことができる制度です。

 要するに「オール・オア・ナッシング」「全か無か」の制度で、「より好み」ができないわけです。

 相続放棄をすると、相続人は相続財産を一切取得することができなくなります。そして、相続人全員が相続放棄をした場合、所要の清算手続を経て、残った土地が国庫に帰属することになります(この点は相続土地国庫帰属と同じですね。)。

 なお、相続放棄の場合、国庫に帰属する土地に関する要件はありません。どんなに管理が大変な土地があっても、相続放棄を行うことは可能です。

 また、重要な違いとして、相続放棄の場合、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続をする必要があります。期限がすぐ来てしまうので注意が必要です。

相続税の物納制度との違い

(前提)相続税の物納制度との共通点

 相続土地国庫帰属制度と相続税の物納制度は、相続によって取得された土地の所有権が行政処分を経て国に移転し、国においてその土地を普通財産として管理、処分する点で共通しています。 

相続税の物納制度との違い

 これに対して、両制度の相違点はどういったところにあるでしょうか?

 まず、相続税の物納制度は金銭での納税義務を負う相続人が、一定の場合に税務署長の許可を得て、金銭に代えて土地等の物を給付することで納税義務を果たすことを認める仕組みです。

 これに対して、相続土地国庫帰属制度は、相続により土地を取得した者が、一定の要件の下で、法務大臣の承認を得て土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする仕組みです。相続税の納税義務があるか否かはここでは問題なっていません。相続税の納税義務があっても利用できまし、納税義務がない場合や既に納税義務を果たした場合でも利用することができます。

 また、両者の違いとして、相続税の物納は、金銭による納付が困難な場合に納税者に代わって国が財産を売却することによってそれを国家の収入とするものです。そのため、基本的にその財産を換価することが予定されています。

 これに対して相続土地国庫帰属制度は、土地の換価の可能性をその要件において考慮していません。言い換えれば、この制度では国に帰属した土地を国が長期的に管理していくことが想定されているわけです(もちろん、売却の余地があれば売却される可能性もあります。)。

最後に

 いかがでしたか?今回は、 相続土地国庫帰属制度と隣接制度の違いについて解説しました。 

 もし、この記事が「わかりやすい」「勉強になった」と思った方はSNS等で共有していただけると、とてもうれしいです。

 なお、この制度の全体像については、次の記事で解説していますので興味がある方はぜひご覧ください。

 【いつから?】令和5年4月開始!相続土地国庫帰属制度とは何か?【いらない土地を国に返す制度!?】

 

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この記事を書いた弁護士

弁護士 荒井達也

太陽光発電等の法律業務に携わる中で所有者不明土地や空き家の問題に直面し、法の不備を痛感。日弁連を通じ法改正に携わった後、現場に戻り問題解決に尽力しております。無料相談は私が対応します。

 

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