2021年4月、相続土地国庫帰属制度ができました!
2021年4月、いらない土地を手放したいと考える方のニーズにこたえるために、相続土地国庫帰属制度が創設されました。
制度の利用開始は2023年(令和5年)4月からです。
今回は、この相続土地国庫帰属制度の全体像を解説したいと思います。
活字より動画で学びたい人向け
なお、この制度はYoutube動画でも解説しているため、活字より動画がよいという方はこちらをご参照ください。
相続土地国庫帰属制度とは?相続土地国庫帰属法とは?
この相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地を国に引き取ってもらう制度のことをいいます。
この制度を定めた法律が相続土地国庫帰属法です。
これまでは、いらない土地を相続した場合、相続放棄、相続税の物納制度、土地所有権の放棄などで土地を手放す方法が利用・検討されてきました。
もっとも、これらの方法には様々な問題があり、実際に利用しにくく、結果的に土地が放置されることが多かったため、これが所有者不明土地の発生要因の一つになっていました。
相続土地国庫帰属制度のメリットとデメリットは?
いらない土地を手放そうと思うと引き取り手を探すことが大変です。
この制度では、条件さえ満たせば国が引き取ってくれるため、そういった手間が掛からないというメリットあがります。
また、引き取り手が国であるため、安心感もあります。
その一方で、お金や手間暇が掛かるというデメリットもあります。
これらのメリットやデメリットは、次の記事で解説していますので興味がある方はこちらをご参照ください。
相続土地国庫帰属制度の特徴
相続土地国庫帰属制度は、相続放棄、相続税の物納制度、土地所有権の放棄などに近いところがありますが、これらにはない、次のような特徴があります。
①いらない土地・希望した土地だけを国に引き取ってもらえる。
②相続税が発生しない場合でも利用できる。
③国の審査を受ける必要がある。
これまでの制度との違いについては次の記事で解説していますので興味がある方はご参照ください。
【何が違う?】相続放棄と相続土地国庫帰属制度の違い
【何が違う?】相続税の物納制度と相続土地国庫帰属制度の違い
【何が違う?】土地所有権の放棄と相続土地国庫帰属制度の違い
よくある誤解!この制度は土地や建物を国に寄付できる新制度なのか?
なお、相続土地国庫帰属制度のことを「土地や建物を国に寄付できる新制度」と理解されている方がいらっしゃいますが、違います。
まず、「建物」については国は引き取りませんし(制度の対象外)、「寄付」という点も異なります。「寄付」は、一般的に手放す側と引き取る側の間の契約(贈与契約)により行いますが、相続土地国庫帰属制度は手放す国民と国が契約を結ぶのではなく、国が審査を行った上で国の行政処分で土地を引き取るという制度です。
相続土地国庫帰属法の施行日(制度開始日)は2023年4月27日から
ちなみに、相続土地国庫帰属制度の施行日(制度開始日)は、2023年4月27日からです。スタート当初は申請が殺到する可能性もあります。この制度を利用して少しでも早く土地を手放したいという方は今から準備を始めておくことをおすすめします。
なお、制度開始前に相続した土地についても制度が利用できますが、この点は次の記事で解説していますのでご関心がある方はご参照ください。
【Q&A】相続したいらない土地を手放す新制度は制度開始前に相続した土地でも利用できる?
経緯――なぜ新制度ができたの?
近年、親から相続した土地の管理に手が回らず、そういった土地を手放したいと考える方が増えています。
とある調査によると、土地を所有することに負担を感じたこと等がある方が全体の約42%になるとの調査結果が出ています(平成30年度版土地白書)。
また、令和2年法務省調査によると、土地を所有する世帯のうち、土地を国に引き取ってもらいたい、そのような制度があれば利用したいと考える世帯が全体の約20%になるとの調査結果も出ています。
そこで、2021年4月、相続により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることができる制度(相続土地国庫帰属制度)が制定されました。
制度の利用条件――どういう場合に利用できるの?
この制度がどのような場合に利用できるか?という制度の利用条件について、以下のとおり、「ヒト」「モノ」「カネ」の観点から一定の条件が定められています。
利用資格(ヒトの要件)
制度が利用できるのは、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限ります。)により土地を取得した相続人の方です。相続人でも、生前贈与を受けた方は対象外です(生前贈与は、相続でも遺贈でもないためです)。
なお、共有地(典型的には複数の相続人で相続した土地)の場合は共有者全員(相続人全員)で申請する必要があります。この点の詳細は次の記事で解説していますので興味がある方はご参照ください。
【誰が利用できる?】相続土地国庫帰属制度を申請する資格【法人も可能?】
対象となる土地(モノの要件)
制度が利用できる土地は、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地以外の土地です。言い換えれば、管理や売却が難しい土地は引き取ってもらえません。
詳細は今後詰められる予定ですが、例えば、以下のような土地に該当する場合は制度が利用できません。
ア 建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある土地
イ 土壌汚染や埋設物がある土地
ウ 崖がある土地
エ 権利関係に争いがある土地
オ 担保権等が設定されている土地
カ 通路など他人によって使用される土地
制度を利用する場合、これらの要件に引っかからないように、建物や山小屋については解体したり、土壌汚染がないか地歴調査を行ったり、古い抵当権が残っていないか確認したりするなど、調査を行うことが必要です。
この点の詳細は次の記事で解説していますので興味がある方はご参照ください。
相続土地国庫帰属制度は山林や農地でも使える?
なお、よくある質問として、「山林や農地でも使えるの?」というご質問をいただきますが、いずれも利用可能です。詳細は次の記事で解説しています。
【Q&A】山林は相続土地国庫帰属制度の対象になりますか?
【Q&A】農地は、相続土地国庫帰属制度の対象になりますか?
もっとも、山林や農地の場合、特有の留意点がありますので、この点は次の記事をご参照ください。
【Q&A】なぜ山林を相続土地国庫帰属制度で手放すことが難しいと言われるのか?
【Q&A】相続土地国庫帰属法を使うなら農地がオススメ?弁護士が解説
【Q&A】新制度(相続土地国庫帰属制度)でいらない実家(建物がある土地)を手放すことは可能?山小屋や廃屋がある山林は?
手数料や負担金(カネの要件)
制度の利用にあたっては、審査手数料のほか、10年分の管理費用を負担金という形で納める必要があります。
ちなみに、現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、粗放的な管理で足りる原野で約20万円、市街地の宅地(200㎡)で約80万円といわれています。
この点の詳細は次の記事で解説していますので興味がある方はご参照ください。
【いくらかかる?】相続土地国庫帰属制度で土地所有権を手放すために必要な負担金とは?
なぜ利用条件があるの?――税金で管理するため
このように「ヒト」「モノ」「カネ」の観点から様々な条件が付されたのは、なぜでしょうか?
それは、第1に、無条件にこの制度の利用を認めると、国に土地の管理費用を押し付けることになり、財政負担が増える可能性がある点が挙げられます。すなわち、国が引き取った土地は税金で管理されるため、無条件に土地を引き取ることができないのです。
また、国が無条件に土地を引き取ってしまうと、土地所有者が「どうせ国が引き取ってくれるなら、管理は適当でいいか」となり、土地の管理をおろそかにする可能性があります(いわゆるモラルハザード)。
このような理由により、先に述べた様々な利用条件が定められることになりました。
手続――どうやって申請すればよいの?
次に、この制度を利用する際の手続についても解説します。なお、この点の詳細は、次の記事で解説していますので興味がある方はご参照ください。
申立て――書類の準備や手数料が必要
まず、制度の利用希望者は申立手数料を支払った上で、申立てを行う必要があります。
申立書の書式や添付書類については施行までに詳細が定められる予定ですが、登記事項証明書や公図等の土地関係の書類が最低限必要になると思われます。
なお、申請窓口については、法務局となりますが、この点は次の記事で詳細を解説していますので関心がある方はご覧ください。
審査――実地調査等が行われます!
次に、申請窓口となる法務局にて制度の利用条件を満たしているかの審査を行います。
審査に際しては、法務局が、現地を実際に見に行くこと(いわゆる実地調査)も想定されています。
また、法務局の方で、土地の管理を担当する部署(農地であれば農水省、農地以外であれば財務省)と協議を行うことも想定されています。
承認!――負担金を納めましょう
審査が完了し、要件充足が認められた場合、国への名義変更が許可されます。
これを承認といい、申請者に書面で通知されることになっています。
この通知書には、先ほど説明した負担金の額も記載されています。
そして、負担金を納めたところで、正式に土地が国に移ることになります。
最後に
いかがでしたか?今回は、2021年に新しく制定された相続土地国庫帰属制度について概要を解説しました。
もし、この記事が「わかりやすい」「勉強になった」と思った方はSNS等で共有していただると、とてもうれしいです。
なお、この制度以外にも不要な土地を手放すための制度について、次の記事で解説していますので興味がある方はぜひご覧ください。
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