いらない土地をあげたい!不要な土地を手放す方法
いらない土地や使わない土地を手放す方法としては、次のようなものがあります。
・売却する
・贈与や寄附をする
・有料で業者に引きとってもらう
・相続放棄をする
・新制度を利用して国に引き取ってもらう(2023年4月以降)
私(記事執筆者)は、弁護士として、いらない不動産の相談に毎月多数対応しています。以下、私の経験も踏まえながら、それぞれの良し悪しを解説していきたいと思います。
売却する
まず、最初に検討すべき方法が売却するという方法です。
売却ができれば、管理や固定資産税等の負担からも開放されることになります。
お金にもなります。
ポイントは買い手の見つけ方――王道はお隣さんに相談すること
問題は買い手の見つけ方です。
高級住宅街の宅地などであれば、不動産会社が、すぐに買い手を見つけるでしょう。
他方で、売却が難しい場合――特に不動産会社もお手上げの物件の場合――、どうすればよいでしょうか。
この場合の定石は、お隣さんやご近所さんに買っていただく方法があります。
「隣の土地は借金をしてでも買え」という格言があるくらいですから、売却が難しい土地でも、お隣さんが購入してくださることがあります。また、先代と付き合いがあったご近所の方が駐車場にでもしようということで購入してくださることもあります(※)。
※この辺の詳細は、田中裕治「本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておきの11の方法」(ファストブック)もご参照ください。
宅地の場合、近隣の自治会に相談したり、農地や山林の場合は地元の農業協同組合や森林組合に相談してみるのも一案です。
なお、お隣さんにお話をする際、値段も重要です。不動産会社は仲介手数料で収益を上げるため、 どうしても価格が高めに出てしまいます。
売れる土地であれば、もちろん、それでよいのですが、不動産会社がお手上げの土地や売れない土地の場合は、大きく値下げをすることを検討してみてください。
ひとつの目安は固定資産評価額です。固定資産納税通知書に土地の評価額が書かれていますので、そちらを参考に打診してみるのも一案です。
引き取ってほしいという思いが強い場合は、さらに減額して相談してもよいと思います。
マッチングサイトを利用してみる
自治体の空き家バンクーー利用者数や認知度が低いところが難点
また、宅地については、市町村が運営している空き家・空き地バンク等に登録することも考えられます。「<市町村名> 空き家バンク」と検索してみて、自治体の空き家・空き地バンクがないか調べてみてください。
しかし、自治体が運営する空き家・空き地バンクは閲覧者数が少なかったり、運営者である自治体のサポートが弱かったりして、あまり上手くいっていないところも少なくありません。
民間のマッチングサイト
そこで、民間の不動産マッチングサイトに登録する方法も考えられます。次のサイトは閲覧者も多く、自分で買主を探してくる手間が大きく省ける点でおススメできます。
○家いちば https://www.ieichiba.com/
○フィールドマッチング https://fieldmatching.com/
「家いちば」は、この手のマッチングサイトの先駆者で、実績もあるため、おススメです。特に、納得感を重視する方――相続した土地を手放すのは気が引けるところがあり、多少手間暇が掛かっても信頼できる人に譲りたいという方――にはおススメです。運営事務局のサポートも手厚い点もおススメできる点です。
家いちばさんは、「空き家幸福論」という書籍も出版されているため、もっとイメージを膨らませたいという方は、こちらの書籍もご参照ください。
また、「フィールドマッチング」は最近出来たサイトばかりのサイトではありますが、負動産に詳しい引取業者さんが運営されているので、ほとんど価値がつかない不動産がお持ちの方にはおススメできます。YOUTUBEチャンネルでも精力的に発信されていて、社長のお人柄もよくわかりますので、興味がある方は、こちらもご参照ください。
さらに、再建築不可物件や売れない物件、中古住宅の仲介を得意とする不動産業者もあります。
○リライト https://www.relight.co.jp/
加えて、山林・原野に関しては、「山いちば」という山林の売買仲介をやってくれる会社もあります。
○山いちば https://yamaichiba.com/forests-selling/
贈与・寄附をする
売却することが難しい場合で、無料でも引き取ってほしいというときは、贈与が選択肢になります。
やはりポイントは引き受け手の見つけ方
ポイントは売却同様、引き受け手の見つけ方です。
売却と同じようにお隣さんやご近所さん等が引き取ってくれることも考えられますし、自治体や自治会・町内会に寄附することも選択肢です。
0円でマッチングサイトに出品する
他方で、両親から相続した不動産だが、東京などの都会に出てしまっため、地縁がなく、こういったツテがないという方には次のようなサービスもおすすめです。
みんなの0円物件 https://zero.estate/
0円で引き渡すため、手放す方は一切責任を負わないという形の契約条件で引き渡すことができます。引き受け手としても、0円で引き受けた物件について元所有者に責任追及することは法的にも心理的にも、かなりのハードルです。
不動産取引に不慣れな方向けの有料サポートもありますので、「とにかく土地を手放したいけど、不慣れな不動産の手続に手間暇は掛けたくない」という方にはおススメです。
NPOに遺贈寄附
また、NPOに遺贈寄附(※)するという方法も考えられます。
※ なお、「遺贈寄附」というのは、個人が遺言によって遺産の全部又は一部を公益法人等に寄付することをいいますので、手放すことができるのは、所有者が亡くなるタイミングです。生きている間に手放すことが出来ない点に留意が必要です。
不動産の遺贈寄附を受け付けているNPOとしては、「かたりば」や「あしなが育英会」があります。
○かたりば https://www.katariba.or.jp/donate/bequeath/
○あしなが育英会 https://www.ashinaga.org/support/legacy-donations/donations-of-real-estate/
贈与・寄付の留意点
贈与や寄附に関して、土地を手放したい方が「無料でも引き取って欲しい」と思う土地ということは、贈与や遺贈寄附を受ける方々も「無料でも受け取りたくない」と考える場合が少なくないと思います。
そのため、受け手が納得してくれなければ、これらの方法は難しいといえます。特に市町村が、不動産の寄附を受け付けることは稀であるといわれています。
参考に、新潟市が公表している寄附を受け付ける要件をご紹介いたします。不動産を手放したい方は、以下の条件に該当しないか、確認してみると、よいでしょう。
【お受けするための要件】
https://www.city.niigata.lg.jp/smph/shisei/zaisan/sonota/tochikifu.html
・法定等に違反しないもの
・行政の中立性、公平性等が確保できるもの
・宗教的又は政治的団体からの寄附でないもの
・将来に紛争や苦情が発生する恐れがないもの
・将来に多額の維持管理費を要す恐れがないもの
・市で管理することが不適当でないもの
・新潟市公有財産規則第13条(注1)に規定する、取得前の措置が済んでいるもの
・行政活用価値又は換価価値が見込まれるもの
・農地にあっては、宅地への転用許可が受けられるもの
※寄附した土地を返還請求できる期間は、用途廃止した物件に限り寄附後20年以内です
【お受けすることができないもの】
・建物等が付属する土地
・自治会・町内会が使用する土地・建物(ごみステーション・自治会館などは、地縁団体として自主管理すべきものであるため。)
また、仮に贈与で受け取ってもよいという方が見つかった場合でも、贈与を行う場合、贈与税等の税金が掛かる可能性があることには注意が必要です(この点は税理士にご相談ください)。
さらに、贈与であっても、売買の場合と同様に土地の名義変更手続が必要になるため、これらの諸費用(司法書士費用・登録免許税等)にも注意が必要です。
お金を払って業者に引きとってもらう
近時、山林・原野や別荘地等を、有料で引き取る不動産会社が出てきていますので、ご紹介させていただきます。
○株式会社KLC 不動産引き取りサービス https://klc1809.com/fudousan.html/
売却や贈与は、どうしても手間が間かかります。親から相続したけど、行ったこともない場所にある土地で、お金を払ってでも、すぐに手放したいという方にはおススメです。
ただ、不動産の引取業者の中には、次のような悪質な詐欺的業者もいるため、こういったサービスを利用する際は信用できる会社か慎重にご検討ください。
【国民生活センターへの相談事例】
相続した山林を手放したいと思っていたところ、業者から「買いたい」と電話勧誘を受け、喫茶店で会った。そこで土地売却の契約書面にサインし、手数料と言われ18万円を支払った。その際、「別の山林を担保として差し出す」という話を受けた。しかし、後日契約書を見たところ、売却と併せて別の山林を買う契約になっていた。話が違うので取り消したい。
国民生活センター相談情報部「より巧妙・深刻化する『原野商法の二次被害』の現状」
https://www.kokusen.go.jp/pdf_dl/wko/wko-201806.pdf
なお、有料引取も法的には贈与となるため、税金や名義変更料が必要になる点には注意が必要です。
相続放棄
相続した遺産を見ても、資産らしいものがなく、負担にしかならない『負動産』しかない場合は、そもそも相続を拒否するということが選択肢になります。いわゆる相続放棄と呼ばれるものです。
注意点――より好み不可、手間が掛かる、短い期限
相続放棄をすると、プラスの資産を含めてすべての遺産を受け取ることができなくなるため、現預金や収益不動産は相続したいけど、それ以外はいらないという場合には利用できません。
また、相続放棄の手続は、家庭裁判所に行って手続を行う必要があるのですが、戸籍謄本を漏れなく集めたり、申請書類を作成するのは簡単ではありません。死亡届を出すことと同じ感覚でいると痛い目に遭います。
さらに、相続放棄は相続があったことを知った日から3か月以内に行う必要があるため、期限がかなりタイトといえます。
おススメする場合
おススメするのは、①遠い親戚の相続人になっていた場合や②地方の山の一部を相続した場合です。
お子さんがいない方が亡くなると結果的に兄弟や甥姪が相続人になることがあります。
もっとも、甥姪からすれば、ほとんど会ったことがないし、自分が相続人になるなんて思っていなかったというケースも少なくありません。
こういった場合、相続人の方も相続に対する期待はないため、抵抗感なく相続放棄がしやすいといえます。
また、地方の山の一部を相続し、ある日、突然、お手紙をもらって相続人になったことを知るケースがあります。具体的には、地籍調査、国土調査、登記所備付地図整備事業の調査などのお手紙が役所から送られてきて、相続人であったことを知ったというケースが典型的です。
これらの場合、相続人が多数いるケースが多く、相続しても売却・放棄などが非常に困難です。なぜなら、権利者が多数いるため、それら全員の判子がもらえないと手続が進められないことが多いためです。そのため、こういったケースでは相続放棄がベターなこともあります。
他方で、売れば1000万近くする不動産があるのに、「ゴミ屋敷だから…」「縁を切ったから」「縁遠いから」などの理由で安易に相続放棄を行って、後で、もったいないことをしたというケースもあります。
相続放棄を行うか否かは、これらを踏まえて、迅速にかつ慎重に検討・判断する必要があります。
お金を払って引き取ってもらう新制度を活用
現預金や収益不動産は相続したいけど、それ以外のいらない不動産は手放したいというニーズに答える制度が2021年に出来ました。
制度のスタートは2023年(令和5年)4月からとなります。
この制度は、管理や処分が難しい土地は引き取ってもらうことができなかったり、負担金として一定の金銭を国に納める必要があったりする等のハードルはあるものの、要件を満たせば国が土地を引き取ってくれるため、手放したい土地があるときはこの制度の利用を検討すべきです。
また、引き取り手が国ですので、「詐欺的業者だったらどうしよう・・・」「引き取り後に問題が生じて何かクレームを受けたらどうしよう・・・」等の心配はいらず、安心感があります。
この制度については、次の記事をはじめ本サイトで詳細に解説しておりますので、各種解説記事をご参照ください。
最後に
最後に、この記事で解説した方法の中で現実的な方法を中心に図にしてみました。多少とも参考になれば幸いです。

いかがでしたか?今回は相続した使わない土地・不要な土地を手放す方法を解説させていただきました。
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