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【Q&A】相続土地国庫帰属制度は開始直後に申請した方がよい?

目次

結論:相続土地国庫帰属制度は開始直後に申請するのがオススメ!

 相続土地国庫帰属制度は開始直後に申請することをオススメします(あくまでも私見ですが。もちろん、例外もあります)。

 この記事では、どうして制度開始直後がよいか?その理由を解説します。

 なお、以下でお話する理由からもわかりますが、開始直後に申請しない方がよい方もいらっしゃるため、気になる方は是非最後までお読みください。

この記事を書いた弁護士

弁護士 荒井達也

群馬弁護士会所属。日本弁護士連合会所有者不明土地WG幹事(2018-22)、前橋市空家対策協議会委員等を務める。著書『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』(重版5刷)でも相続土地国庫帰属制度を解説している。負動産の相談実績多数。

制度開始直後に申請した方がよい理由

将来運用が厳しくなる可能性がある!?

 制度開始直後に申請した方が良い理由として、この制度が前例がないものであるため、制度開始後に様々な問題が出てきたときに、運用が厳しくなる可能性があるという点を挙げることができます。

弁護士A
弁護士A

いやいや、相続土地国庫帰属制度では、審査を行う法務局に裁量が認められていないから、いつ申請しても結果は同じはずだ!

 法律論としてはそのとおりなのですが、どんな法律でも運用する官庁のさじ加減が作用することがあります。

 例として、弁護士が行う「訴訟」があります。

 訴訟というのは、裁判所が法律を前提に、証拠に基づく事実認定を通じて白黒つける制度です。そのため、本来的に裁判官の裁量で結論が変わることは予定されていません(例外はあります。)。もっとも、証拠評価、事実認定、法の適用などの様々な場面で、裁判官の個性が出ることがあります。

弁護士B
弁護士B

確かに、「保守的な裁判官」「当たりの裁判官」と感じることはあるなあ。裁判官は直感で結論を決めているという話も聞くし、裁判官次第というところも少なからずあると思う。

 相続土地国庫帰属制度についても、制度の建前上は、裁量がなく、誰が審査しても同じ結果になる建付けとなっていますが、実際上は、運用を担当する法務局や法務省が出す通達次第で、時期によって結論が変わる可能性があります。例えば、境界の確定状況を示すための添付書類の扱いや管理処分を阻害する残置物の判定などの運用が厳しくなる可能性や緩やかになる可能性があると思われます。

 その結果、①制度開始当初は審査が緩く、その後厳しくなる可能性、②制度開始当初は審査が厳しいが、その後緩くなる可能性などが出てくると思われます。。

 仮に、①だった場合、制度開始直後に申請をしたほうが「お得」といえます。他方で、②制度開始当初は審査が厳しいが、その後緩くなった場合、制度開始直後に申請をすると却下・棄却されるかもしれませんが、将来、運用がゆるくなった場合、そのタイミングで再度申請をすれば、いらない土地を手放すことができます。

逆に、①制度開始当初は審査が緩く、その後厳しくなった場合、制度の運用が厳しくなったタイミングで申請しても土地は手放せないね。

 以上を理由に、私は制度開始直後に申請する方がよいと考えます。

政省令や法律が改正されて厳しくなる可能性も

 ここまで述べた点は、制度を運用する官庁のさじ加減が認められる領域での話ですが、他にも近い話はあります。

 すなわち、関連政省令の取扱いです。

 そもそも、相続土地国庫帰属法では審査基準を政省令に委任しています。

 当初定める政省令が緩い場合、その後厳しい内容に変更される可能性があります。

 また、法律自体も施行から5年後に見直しが予定されていますので法律自体が変わる可能性もあります。

 以上を踏まえても、制度開始当初に申請をした方がよいといことになります。

ただし、審査手数料や専門家報酬には要注意

 もっとも、注意が必要な点があります。

 それが審査手数料や専門家報酬です。

 本記事執筆時点で、相続土地国庫帰属制度の審査手数料は公表されていませんが、この手数料が高い場合、②制度開始当初は審査が厳しいが、その後緩くなったというシナリオが実現したときに、申請が二度手間になるばかりか、審査手数料を二回納めることになります。

 以上は申請を弁護士や司法書士等の専門家に依頼する場合の専門家報酬にも当てはまります(とりわけ、制度開始直後は、法律専門家の方も手探りになるため、費用が割高になる可能性もあります。)。

 そのため、少しでも金銭的な負担を軽減したいという場合は、盲目的に制度開始直後に申請することには慎重になった方がよいと思います。

とは言っても、ただの理屈の話でしょ?

なんだか小難しいこといっているけど、あくまでも理屈の話であって、実際には関係ないんじゃないの?

 確かにその指摘は正しいかもしれません。

 ただ、日本の法制度を少し振り返ってみても、そうとは言い切れません。

 例えば、2010年代に増えた太陽光発電所は、東日本大震災後にできた固定価格買取制度によるものが多いのですが、この制度は、当初非常に緩い内容であったため、悪質な業者を含め有象無象の事業者が参入し、ある種の社会問題にまで発展する事態に至りました。

 その後、経産省があの手この手で規制を厳しくし、今は昔ほど美味しいビジネスではないと言われています。

確かに、ここ10年で太陽光パネルがとても増えたなあ。崖にパネルを置いていることもあって、危険だなと思っていたけど、そんな背景があったのか。

 これと全く同じことが起きると断言するわけではありませんが、相続した土地を手放したいという方は全国に非常にたくさんいらっしゃいます。

 今後、そのような方による相続土地国庫帰属制度の申請が殺到し、当初は審査を通していたけれども、あまりにも多く、国の財政負担も馬鹿にならないことから、法令の制限が厳しくなる可能性は十分に考えられます。

 逆に、あまりにも厳しくしてしまった場合、法律の目的である所有者不明土地の発生抑制という政策目的が実現されないことになりますので、ずっと要件が厳しいままということはあまり考えにくいといえます(もちろん、だからといってあらゆる土地について国庫帰属が認められるというわけではないと思いますが)。

制度開始当初は申請が殺到して手続に時間が掛かるのでは?

でも、 制度開始当初は申請が殺到して手続に時間が掛かるのでは?

 確かに申請が殺到すれば、その分、審査に時間が掛かることは間違いないでしょう。

 もっとも、その場合でも、申請があった順番で審査が行われていきますから、申請が遅いほうが土地を手放すことができる時期が遅くなるといえます。

 近年、規模の大きい災害が増えており、使わない土地のリスクというものは決して無視できません。

 申請時期が1か月遅れたことで、熱海市で起きたような土砂災害の被害を被り、損害賠償責任を負わされ、国からも引き取りを拒否されたとなれば、悔やんでも悔やみきれません。

 審査に時間が掛かるから落ち着いてから申請しようというのはあまり合理的な理由にはならないと思います。

最後に

 いかがでしたか?今回は、2021年に新しく制定された相続土地国庫帰属制度について、制度開始直後に申請した方がよい理由を解説しました。

 もし、この記事が「わかりやすい」「勉強になった」と思った方はSNS等で共有していただけると、とてもうれしいです。

なお、相続土地国庫帰属制度の全体像については、次の記事で解説しています。

 【いつから?】令和5年4月開始!相続土地国庫帰属制度とは何か?【いらない土地を国に返す制度!?】

 また、相続土地国庫帰属制度以外の方法で土地を手放す方法については、次の記事で解説しています。

 【2022年版】いらない土地をあげたい!不要な土地を賢く売る・手放す方法5選

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この記事を書いた弁護士

弁護士 荒井達也

太陽光発電等の法律業務に携わる中で所有者不明土地や空き家の問題に直面し、法の不備を痛感。日弁連を通じ法改正に携わった後、現場に戻り問題解決に尽力しております。無料相談は私が対応します。

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