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山林等の土地・不動産の有償引き取りサービスは怪しい!?評判は?注意すべき点を弁護士が徹底解説

この記事を書いた人

弁護士 荒井達也

日本弁護士連合会の専門チームの一員として相続土地国庫帰属制度の制定に関与。100件以上の相談・依頼に対応。NHKクローズアップ現代や読売新聞等、全国メディアにも多数出演。国庫帰属制度の解説書も重版七刷。解説動画1万回再生突破。

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目次

お金を払って土地・不動産を引き取ってもらうサービスが増えている

最近、処分料を支払えば、不要な土地(山林など)を引き取るサービスを行う業者が非常に増えてきました。

ホームページなどで把握できるかぎりですが、次のような業者さんがいます。

  1. 株式会社KLC
  2. 株式会社LandIssues
  3. 株式会社EINZ
  4. 恵比寿商会株式会社
  5. 不動産直売所
  6. 一般社団法人日本土地管財
  7. やまねこ不動産株式会社
  8. 合同会社新翔
  9. 佐藤和基税理士事務所
  10. YAMAKAS 運営事業者:メディコム株式会社

引取り業者の中には、詐欺業者がいるのも事実です。

そのため、不動産や法律の素人の方は、絶対に注意してください。

今回は、山林の引き取りサービスに注意すべき理由を解説したいと思います。

注意すべき理由

多額の税金が掛かる可能性がある

引取サービスを行っている事業者は、個人ではなく、法人であることが一般です。

法人に1円または無償で土地を引き渡すことになりますが、この場合、多額の所得税が掛かる可能性があります。

土地や建物の売却先が法人であり、しかも売却価額が時価の2分の1を下回っている場合は、売った土地や建物の時価を収入金額として譲渡所得が計算されます。例えば、同族会社の代表者個人がその会社に時価1億円の土地を4,000万円で売った場合は、売った金額4,000万円ではなく1億円が譲渡所得の収入金額になります。
国税庁HP「時価より低い価額で売ったとき」

手放したい土地の場合、固定資産評価額(固定資産税の課税明細に記載されている額)が安いということはあるかもしれません。

もっとも、固定資産評価額は時価ではありません。

「どうせ売れない土地だから・・・」と甘く考えていると、多額の所得税が課せられる可能性があります。

詐欺被害の危険がある

近年、いらない不動産を相続した方を狙った詐欺が急増しています。

国民生活センターでも、詐欺被害の急増を受けて注意喚起を行っています。

(出典:国民生活センターhttps://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180125_1.html)

上記のサイトでは、次のような詐欺が紹介されています。

  • 子に迷惑をかけたくなく原野を売却したが、新たな土地の契約をさせられていた事例
  • 宅地建物取引業の免許を持つ業者だというので信用したが契約後連絡が取れない事例
  • 山林を購入したい人がいると説明され、調査と整地費用を払った事例
  • 覚えのない管理業者から別荘地の管理費20年分を支払えとの通知が届いた事例

もっとも、詐欺被害は、日々巧妙化しています。

国民生活センターのホームページに掲載された手法と同じようなことをする業者は減るでしょう。

むしろ、負動産を手放したいと考える方を狙った新しい詐欺がこれから増えていくと思われます。

法規制がない=安心安全の欠如

仮に詐欺でないとしても、安心できるとは限りません。

なぜなら、不動産を有料で引き取るというサービスは、最近登場したもので、これを規制する法律がないからです。

通常、消費者向けのサービスには、法律の規制があります。

例えば、飲食店であれば、食品衛生法があります。

不動産会社であれば、宅地建物取引業法があります。

お医者さんであれば、医師法があります。

銀行であれば、銀行法があります。

弁護士ですら、弁護士法があります。

これらは、消費者の方が悪質な被害に遭わないために作られたものです。

しかし、有料引取サービスには、こういった法律がありません。

言い換えれば、法律がないので、好き勝手できるということです。

みなさんは、食品衛生法がない国の飲食店で食べ物を買いたいと思いますか?

医師法がない国のお医者さんの手術を受けたいと思いますか?

弁護士法がない国の弁護士に頼みたいと思いますか?

私達は、事業を規制する法律があるからこそ、安心してサービスを利用することができます。

しかし、有料引取サービスには、そういった法律がなく、安心安全が確保されていないのです。

しかも、有料引取サービスは、会社を作れば、すぐ始められます。

専門知識や資格は全く不要です。

施設や設備も不要です。

誰でも手軽に始められるのです。

あなたは、誰でもお医者さんになることができる国で、医療を受けたいと思いますか?

有料引取サービスには、このように法規制や開業のための負担がないため、安心安全が法制度上確保されていないという問題があります。

引取会社が廃業したら前の所有者が訴えられる?

仮に詐欺業者ではないとしても、また、真面目に取り組んでいるとしても、安心できません。

具体的には、引取先が廃業したケースです。

廃業するケースには、最初から廃業を計画していた「計画倒産」と呼ばれるケースや代表者の年齢の関係で廃業するケース、土地の管理費をまかないきれなくなったケースなどが考えられます。

有償引き取りサービスを行っている会社は、引き取った土地を持ち続けることが多いです。

誰にも売れないと思って引き取ってもらった土地が高く売れることは考えにくいでしょう。

引き取れば引き取るほど、必要な管理費が増えます。

その管理費や人件費が引取料を超えると、赤字になります。

そうだとしたら、どこかのタイミングで管理費・維持費が支払えなくなって破綻すると思いませんか?

そして、もし、引取会社が、将来、廃業した場合、引き取られた土地を管理する人がいなくなります。

そこで、もし、その土地が原因で人身事故などが起きたらどうなるでしょう?

通常は、所有者に損害賠償を請求するわけですが、その所有者がいないわけです。

しかも、その土地は前の所有者時代から整備されていない状態です。

被害者から依頼を受けた弁護士は、事故の原因は、未整備だった前の所有者にあると考えて、前の所有者を訴える可能性があります。

「そんなまさか・・・」と思うかもしれませんが、実例があります。

数年前に静岡県熱海市で起きた土砂崩れの事件では、前の所有者に対し、合計で32億円の損害賠償が請求されています。

(出典:日経ビジネス電子版 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00145/100400044/ )

被害者からの損害賠償以外にも静岡県が土砂の撤去費用4億6000万円の納付を求めているとのことです。

(出典:朝日新聞電子版https://www.asahi.com/articles/ASRDW6QCNRDWUTPB00N.html)

更には、人身事故の場合、刑事事件になる可能性もあります。

家宅捜索を受けたり、刑事裁判にかけられる可能性があるということです。

仮に、これらの裁判で、前の所有者の責任が否定されたとしても、裁判に掛かる弁護士費用は100万円以上になる可能性が十分にあります。

また、大型の裁判には数年単位で時間が掛かりますから、精神的にも、長い間、つらい思いをすることになります。

「お金を払えば、ポイッと土地を捨てられる」という謳い文句で、後で大きな後悔をしないように気をつけてほしいところです。

次世代の相続人がトラブルに巻き込まれる可能性も――死ぬまで賠償地獄

仮に、土地の問題が生じたのが、次世代の相続人の世代だった場合どうでしょうか?

その場合、相続放棄の期限が過ぎていることが多いでしょうから、相続人の方々が直接矢面に立つ形になります。

自己破産しようと思っても、人身事故関係の損害賠償責任は、自己破産でも免責されない可能性があります。

考えてみたらあたりまえで、人身事故につながるような問題を起こしておいて、あとで自己破産してチャラにできるとなれば、被害者は救われませんよね。

もし自己破産でも免責されない場合、相続人の方は一生かけて莫大な損害賠償金を支払うことになるかもしれません。

クチコミ(評判)が当てにならない

なお、引き取りサービスを行っている会社の中には、利用者からのクチコミを集め、信頼性をアピールしている会社があるかもしれません。

仮に、そのクチコミがよい内容だったとして、その事業者は信用してよいでしょうか?

結論としては、クチコミがよいというのは、あてになりません。

そもそも、クチコミが誰によってなされたものかがわかりません。

架空の人物のものかもしれません。

また、仮に実際の利用者の声でも直ちに信用できるとはいえません。

なぜなら、引き取りサービスが安心安全だったかは、すぐに検証できないからです。

通常、クチコミが行われるのはサービス利用直後です。

しかし、引き取りサービスで一番大事な点は、長期的な観点でトラブルや問題が起きないかです。

例えば、サービス利用後3年経過したあとに人身事故が起き、トラブルに巻き込まれた場合、口コミを投稿したサービス利用直後にはそれはわかりません。

サービス利用直後は、懸案の不動産を手放せたということで安心していることが多いため、必然的に評価は高くなります。

また、法律や不動産の素人に事業者の良し悪しは判断できません。

せいぜい、評価のポイントは、担当者の対応が早かったか?丁寧だったか?という点でしょう。

そうだとすると、クチコミがよいから信用できるというのは当てにならない意見です。

正しい業者の判別基準がない

もっと、難しいのは、正しい業者の判別基準がないことです。

「私は正直者です」という人間がいたとしても、その人間が詐欺業者ではないとは限りません。

嘘つきが、「自分が正直者です」と言っても信用できませんよね?

なお、宅地建物取引業者(不動産業の免許を受けた事業者)であれば、信用できるという意見を聞くことがあります。

もっとも、消費者が本当の宅地建物取引業者であるかを見極めることは簡単ではありません。

仮に本当の宅地建物取引業者であっても、不誠実な業者ではないという保証はありません。

これまた安心材料にはなりません。

リスクが周知されていない

また、現在、引き取りサービスに関して信頼できる情報が少ないということも問題です。

社会的な認知度が低いため、実際に問題になった業者の事例がなかなか表に出てきません。

こういったところも注意が必要なところです。

士業と提携している事業者も

また、士業と提携して安全安心を装っている事業者もいます。

提携している士業の中には、引取業者の実態を知らずに提携していることもあり、これ自体も問題ですが、士業が勧めたから将来問題が起きないということではないため、この点も難しいところです。

真面目な業者ほど、競争に勝てない

引取サービスを利用者が一番気にするのは引取料です。

しかし、引取事業者が引取後の管理を適正に行おうとすると、引取料が増えます。

他方で、適当な管理でよいと思う業者ほど、引取料が安くなります。

そうなると、必然的に引取料が高い真面目な業者は淘汰されます。

ただし、この意見を目にした悪徳業者は、じゃあウチも高くして信頼性をアピールしようと考えるかもしれません。

そうなると、なかなか難しいですよね。。。

引取サービスを使わなくても、意外と引き取り手はいる

引き取りサービスの利用者は、他に処分する方法がないという思考に陥っていることがほとんどです。

しかし、近年、売れない不動産を手放す方法が増えてきました。

例えば、このサイトでもよく紹介している相続土地国庫帰属制度は、現在、承認率が90%を超えており、不動産を手放すための有力な選択肢になっています。

相続土地国庫帰属制度は、法律で定められた制度ですから、詐欺被害を懸念する必要はありません。

引き取り手も国なので安心ができます。

また、国の制度以外でも、一般の方に譲渡できるケースも増えています。

当サイトでも、負動産の掲示板というサイトを運営しています。

筆者の依頼者の中でも、こういったサイトで山林の引き取り手を見つけたという方は少なくありません。

自分が相続した土地は誰も引き取り手がいないと安易に思考停止するのではなく、次の世代に迷惑をかけないという目的から丁寧に考えていただきたいと思います。

詐欺業者は「ラクをしたい人」と「思考停止した人」を狙っている

いらない土地や山林を相続した方は、みなさん苦しんでいます。

管理の手間や固定資産税等の支払いから始まり、災害時の不安など、決して心休まらない日々を過ごしていることが少なくありません。

もっとも、詐欺業者は「ラクにお金を稼ぎたい人」「もっともらしいものを安易に信用する人」を狙います。

お子さんたちのためにやったことが、かえってお子さんたちに迷惑を掛ける場合があることを踏まえて、負動産の処分方法は、丁寧に考えてください。

さいごに

負動産の窓口では、負動産でお困りの方のために初回30分の無料相談を受け付けています。

一つの専門家の意見として、考えを吟味する材料に使っていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

弁護士 荒井達也

日本弁護士連合会の専門チームの一員として相続土地国庫帰属制度の制定に関与。100件以上の相談・依頼に対応。NHKクローズアップ現代や読売新聞等、全国メディアにも多数出演。国庫帰属制度の解説書も重版七刷。解説動画1万回再生突破。

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