相続した田んぼや畑を手放したいと思っても、「場所が分からない」「農地として扱われるのか分からない」「誰に相談すればよいか分からない」と、入口で止まってしまう方は少なくありません。
農地は、一般的な宅地と同じ手順で自由に売却・転用できるとは限りません。処分方法を考える前に、土地の場所、現在の状態、法令上の区域区分を確認する必要があります。
先に結論をお伝えすると、相続農地の処分でつまずきやすいポイントは次の3つです。
- 農地の正確な場所を特定できていない
- 現況と「農地としての法的な扱い」を確認していない
- 市街化区域・農用地区域などの区域区分を確認していない
この記事では、YouTubeチャンネル「負動産の窓口│土地じまい専門チャンネル」で最も再生されている動画の内容をもとに、相続した農地を整理するときの確認手順を分かりやすく解説します。
この記事を書いた人

弁護士 荒井達也
群馬弁護士会所属。負動産問題に注力する弁護士。日本弁護士連合会の専門チームを通じて相続土地国庫帰属制度の制定に関与し、読売新聞など全国紙の取材対応や専門書の出版、セミナー等を通じて、相続土地国庫帰属制度や負動産の処分方法を解説しています。
ポイント1:農地の正確な場所を特定する
最初のつまずきは、「相続する農地がどこにあるのか分からない」という問題です。特に、親や配偶者の実家が所有していた農地では、相続人自身が現地を見たことがないケースもあります。
地番と住所は同じとは限らない
固定資産税の納税通知書や登記事項証明書に記載されているのは、原則として土地の「地番」です。日常生活で使う住所とは異なるため、地番をGoogleマップに入力しても目的の農地が表示されないことがあります。
eMAFF農地ナビで調べる
農地の位置を調べる手段の一つが、農林水産省の「eMAFF農地ナビ」です。「条件から探す」で都道府県、市区町村、大字、地番などを入力すると、農地のおおよその位置や地目、面積、地域区分などの公表情報を確認できます。
ただし、農地ナビの位置や区画は概略であり、表示情報には法的な証明力がありません。情報が古い場合や表示されない農地もあるため、最終的には現地確認、法務局の資料、所在地を管轄する農業委員会への照会を組み合わせて確認してください。
ポイント2:現況と農地としての法的な扱いを確認する
登記上の地目が「田」や「畑」であっても、現地では長年耕作されず、樹木が生えて森林のようになっていることがあります。反対に、荒れて見えても、再び耕作できる農地と判断される場合もあります。
農地として扱われるかどうかで、譲渡できる相手や必要な手続き、転用の可能性が大きく変わります。まずは写真や現地調査で現在の状態を確認し、農業委員会に次の点を相談しましょう。
- 現在も農地として扱われているか
- 農地台帳にどのように記録されているか
- 再生利用が困難な農地として非農地判断の対象になり得るか
- 必要な申出、現地調査、提出書類は何か
「荒れている=自動的に農地ではなくなる」わけではない
農林水産省は、森林の様相を呈するなど農地への復元が著しく困難な土地や、復元しても継続利用が見込めない土地について、農業委員会が迅速かつ適切に非農地判断を行うよう通知しています。
もっとも、所有者が一方的に「もう農地ではない」と決めることはできません。自治体や土地の状況により調査・判断・証明の扱いが異なるため、農業委員会に個別確認が必要です。非農地判断を受けた後も、登記地目の変更など別の手続きが必要になる場合があります。地目変更については、法務局や土地家屋調査士に相談するとよいでしょう。
ポイント3:農地が属する区域を確認する
農地として扱われる場合、次に確認したいのが区域区分です。同じ農地でも、どの区域にあるかによって転用や処分の難易度が変わります。
市街化区域内の農地
市街化区域内にある農地は、農地転用について都道府県知事等の許可ではなく、あらかじめ農業委員会への届出で進められる場合があります。ただし、都市計画法、建築基準法、接道、造成、上下水道など、農地法以外の規制や費用も確認が必要です。「届出で済むから必ず宅地にできる」という意味ではありません。
農用地区域内の農地(いわゆる青地)
農業振興地域の農用地区域内にある農地は、農業上の利用を確保するため、原則として農地転用が認められません。農地以外の用途に使うには、農用地区域からの除外が認められたうえで、農地法上の転用許可を受ける必要があります。除外には法定要件があり、簡単に認められるものではありません。
農用地区域外の農地(いわゆる白地など)
農用地区域外であっても、農地転用が自由になるわけではありません。農地法による転用許可が必要になることがあり、農地の区分、周辺状況、計画する用途などによって判断されます。駐車場、資材置場、住宅など具体的な利用案がある場合は、その内容を伝えて農業委員会へ相談してください。
相続農地の処分を進める5つの手順
- 所有する農地を洗い出す
固定資産税の納税通知書、名寄帳、登記事項証明書などで所在・地番・面積・名義を整理します。 - 場所と現況を確認する
eMAFF農地ナビ、法務局の地図・公図、現地写真などを使って位置と現在の状態を確認します。 - 農業委員会に照会する
農地該当性、市街化区域、農振法区分、転用の見込み、地域計画、必要な手続きを確認します。 - 処分ルートを検討する
近隣農家への売却・贈与、農地中間管理機構の活用、転用後の売却など、土地に合った方法を比較します。 - 契約・許可・登記を進める
農地法上の許可や届出を確認し、契約条件と費用負担を明確にしたうえで所有権移転登記等を行います。
よくある質問
農地を一般の不動産会社に相談してもよいですか?
相談は可能ですが、農地の取引や転用は専門性が高く、対応していない会社もあります。断られた場合でも処分できないと決まったわけではありません。農業委員会や、農地・負動産の処分に詳しい専門家へ相談しましょう。
農地を0円で譲れば自由に手放せますか?
無償譲渡であっても、農地法上の許可等が必要になることがあります。また、測量・登記・税金・未払費用・土地改良区への対応などの問題もあります。引受人が見つかっただけで完了とは考えず、契約前に必要手続きと費用負担を確認してください。
最初の相談先はどこですか?
土地の所在地を管轄する市町村の農業委員会が基本です。遠方の農地でも、まず電話で地番を伝え、確認できる情報、必要書類、現地調査の要否を聞いてみましょう。複数の農地や共有、相続未登記、所在不明などが重なる場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ:処分方法を探す前に、農地の「正体」を確認する
相続農地の処分は、いきなり買い手を探すよりも、まず次の3点を確認することが重要です。
- その農地は正確にどこにあるのか
- 現在の状態と、農地としての法的な扱いはどうなっているか
- 市街化区域・農用地区域など、どの区域に属しているか
この3点が分かれば、農地のまま譲るのか、転用を検討できるのか、非農地判断について相談すべきかなど、次の一手が見えやすくなります。農地の扱いは土地ごとに異なるため、一般論だけで判断せず、所在地の農業委員会や専門家に確認しながら進めてください。
負動産の処分に特化した「負動産の窓口」
負動産の窓口は、売れない農地・山林・空き家・別荘地など、一般の不動産会社では取り扱いが難しい「負の不動産」の処分に特化した窓口です。
これまでの処分実績は200件以上、900筆超。農地の処分も数多く取り扱っており、土地の状況を整理したうえで、一件ごとに適した処分方法を検討しています。「何から確認すればよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。
YouTubeで処分ノウハウと実際の体験談を公開しています
負動産の窓口│土地じまい専門チャンネル(YouTube)では、農地・山林・空き家などの処分方法を弁護士が分かりやすく解説しています。
参考資料
※本記事は、動画の内容をもとに2026年9月21日時点の農林水産省公表資料を確認して作成した一般的な情報です。個別の土地に必要な手続きや判断は、所在地、現況、権利関係、自治体の運用等によって異なります。具体的な案件は、管轄の農業委員会、法務局、弁護士、司法書士、土地家屋調査士等へご確認ください。

