はじめに
2021年4月、不要な土地を手放して国に引き取ってもらえる制度(相続土地国庫帰属制度)が創設されました。
この制度は、2023年4月から利用できます。
今回は、この制度により、建物がある土地を手放すことは可能か?更に山小屋や廃屋がある山林についてはどうか?という点について解説したいと思います。
建物がある土地は門前払い!更地にする必要性
結論から申し上げると、建物がある土地について、新制度は利用できません。
なぜなら、相続土地国庫帰属法に「建物の存する土地」は手放すことができないと定められているためです(法2条3項1号)。
建物があると、土地の管理に多大な負担が生じるため、この制度の対象外とされたのです。この点については、国会審議において政府参考人が次のように述べています。
○小出政府参考人(法務省民事局長(当時))
第204回国会 法務委員会 第7号(令和3年3月24日(水曜日))
建物は、一般に管理コストが土地以上に高額である上、いずれ老朽化することになることから、仮にこれを土地と同様に国が引き受けることを認めることとすると、管理に要する手間やコストが更に増えるだけでなく、最終的には建て替えや取壊しが必要となることから、財政的にも相当の負担が生ずることになります。このため、建物はこの制度の対象外にすることとし、土地についても、その上に建物が存する場合にはこの制度の対象外にすることとしております。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000420420210324007.htm
以上を踏まえると、建物がある土地については、そのままだと制度が利用できないため、建物を取壊して更地にしたうえで申請をする必要があります。
山小屋や廃屋がある山林は?
山小屋や廃屋がある山林については、どうでしょうか?
また、その山小屋や廃屋が老朽化し、建物とはいえない状態になっている場合はどうでしょうか?
確かに、物置小屋のような場合は、建物には該当しない場合があります。
しかし、この場合、地上に存する工作物として管理に過分の費用又は労力を要するときは、制度が利用できません(法5条1項2号参照)。
なお、この点については、国会でも、次のようなやりとりなされています。
○川合孝典議員
土地所有権の国庫への帰属に関する法律のこの二条三項に定める国庫帰属の要件、幾つかある要件の中で、建物の存在する土地というものが帰属させられない土地の要件に一つ掲げられていますが、これは廃屋なんかも含まれるわけでしょうか。
○小出政府法務省民事局長(当時)
委員御指摘のいわゆる廃屋につきましては、それがいまだ建物としての状態を保っている場合には二条三項一号の建物の存ずる土地に該当することになり、屋根が崩落するなどしてもはや建物とは言えなくなっている場合には、通常は第五条第一項第二号の土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物が地上に存する土地に該当することになるものと考えられまして、いずれにしても、国庫帰属の要件を満たさないことになるものと考えられるところでございます。
第204回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和3年4月13日
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000420420210324007.htm
以上を踏まえると、山小屋や廃屋がある山林を手放したい場合は、まず、その山小屋や廃屋が建物といえるかを検討する必要があります。
仮に建物といえる場合は、建物を解体する必要があります。
他方で、建物ではない場合(工作物に該当する場合)は土地の管理を阻害するかを検討する必要があります。
もし管理を阻害する工作物であれば、取り壊す必要があります。
なお、山小屋等を近隣の土地所有者の方に引き取ってもらうことができるのであれば、山小屋等がある部分を分筆し、切り離したうえで山小屋等がない部分だけ国庫帰属の申請を行うことも選択肢になります。
なお、山小屋等を近隣の土地所有者の方に引き取ってもらうことができるのであれば、山小屋等がある部分を分筆し、切り離したうえで山小屋等がない部分だけ国庫帰属の申請を行うことも選択肢になるでしょう。
最後に
いかがでしたか?今回は、建物がある土地を相続土地国庫帰属制度により手放すことは可能か?について解説しました。
なお、国庫帰属制度の全体像については、次の記事で解説しています。
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