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(実例あり)相続土地国庫帰属制度の条件は本当に厳しいのか?承認要件を弁護士が徹底解説

この記事を書いた人

弁護士 荒井達也

日本弁護士連合会の専門チームの一員として相続土地国庫帰属制度の制定に関与。100件以上の相談・依頼に対応。NHKクローズアップ現代や読売新聞等、全国メディアにも多数出演。国庫帰属制度の解説書も重版七刷。解説動画1万回再生突破。

目次

成功率93.4%!いらない土地を国に返す『国庫帰属制度』の条件は本当に厳しいか?

こんにちは!弁護士の荒井達也です。

今回は、相続土地国庫帰属制度の条件は本当に厳しいのか?というテーマで解説します。

みなさん、「相続土地国庫帰属制度」と聞いて、どのようなイメージを持っていますか?

「いらない土地だけ国に返せる制度って聞いたけど」

「でも条件が多くて、厳しいんでしょ?」

「ネットで調べていたら、『この制度が使えるのは売れる土地』だと聞いて落胆しました」

「申請前に50万以上掛かて測量をしないといけないんでしょ?」

こういった感想お持ちではありませんか?

しかし、これらは、すべて誤解です!

確かに、私も制度開始前はこの制度の要件が厳しいと感じていました。

引き取った土地は国の税金で管理するから、ある程度厳しいのはしょうがないとも思っていました。

しかし、国の引取りが認められた割合を示す承認率(成功確率)が95%以上であったことがわかりました!

95%の確率で国に引き取ってもらえる制度は、果たして条件が厳しいと思いますか?

実は、ここだけの話、「条件が厳しい」と言っている人は、国庫帰属制度のことを知らない人です。

さらに酷い場合だと、自分のサービスや商売に繋げるために、意図的に国庫帰属制度は使えないと言っていることもあります。

私は、これまで100件以上の相談を受けてきましたが、条件が厳しいとは思いません。

実際、私のご相談者様の中でも実際に国庫帰属制度で土地を手放した方やこの制度を申請して国の審査を受けている方がたくさんいます。

むしろ、条件が緩く、将来、法改正で条件が厳しくなったり、利用料金が上がらないか?という心配すらしています。

もちろん、どんな土地でも国が引き取るわけではありません。

申請する際はそれなりの準備も必要です。

ただ、国庫帰属制度の制定に携わった者として、国庫帰属制度のことをよく知らない方々が条件が厳しいというのはすごく歯がゆい思いです。

負動産で困っている方が多いのに、条件が厳しいの一言で、手放す可能性を切り捨てるのはいかがなものかと思います。

私は、現状の承認率の高さも踏まて、もっと、みなさんに国庫帰属制度を正しく理解してほしいと感じています。

そこで、今回は、誤解が多い相続土地国庫帰属制度について、制度の制定にも関与した弁護士の私が、制度の利用条件を徹底的に解説したいと思います。

この記事を読み終わった後には、専門家顔負けのレベルで国庫帰属制度が理解できます。

さらには、自分が国庫帰属制度を利用すべきか、利用しない場合はどういった処分方法が自分に合っているかも理解できます。

「負動産で子どもたちに迷惑を掛けたくない」

「自分の代で負動産を整理しておきたい」

このように考えている方は是非最後までご覧ください。

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相続土地国庫帰属制度の要件(利用条件)

相続土地国庫帰属制度には3つ利用条件があります。

  • ヒトの条件…どういう方が利用ができるか?
  • モノの条件…どういう土地であれば引取が認められるか?
  • カネの要件…どれくらいのお金が必要か?

ヒトの条件(利用資格)

土地を相続した人はOK⇔生前贈与はNG

制度が利用できるのは、相続や遺言で土地を取得した相続人の方です。

これに対して、土地の購入者は対象外です。

具体的には、原野商法の被害者や売れない別荘地を購入した方には申請資格がありません。

原野商法の被害に遭った方は、「売買」で土地を取得しているため、利用資格を満たさないのです。

別荘地の購入者も同様です。

ただし、原野商法の被害に遭った方や別荘購入者の相続人であれば、利用資格が認められます。

したがって、「原野商法でだまされて買った土地だから」「別荘地だから…」という理由で諦める必要はありません。

もう一つ、注意が必要な点があります。

相続人の方でも、生前贈与や家族信託(生前に隠居するような形で財産を子どもに譲る制度)を受けた方は対象外です。

生前贈与や家族信託は、「相続」ではないからです。

最近は、終活が大事だと言われます。

しかし、終活の一環でいらない土地を生前贈与してしまうとお子さんはこの制度が利用できなくなります。

具体的なチェック方法

なお、以上について、心配がある方は、土地の登記簿を見てください。

不動産の取得理由である「原因」欄に「●年●月●日相続」と書いてあればOKです。

【関連】名義が亡くなった親のままの場合

名義が亡くなったご両親の名義のままの場合にも、申請は可能です。

ただし、この場合、相続登記(名義を存命する相続人に変える手続)に必要な資料を提出する必要があります。

具体的には、例えば、以下のような資料です。

  • 名義人の生まれてから死ぬまでの戸籍全部
  • 相続人全員の最新の戸籍
  • 遺産分割協議書又は遺言書
  • 印鑑証明書

あくまでも例示ですので、具体的な書類はケースバイケースで違います。

まずは、上記の書類が手元にあるか確認してみましょう。

なお、私の個人的な見解としては、多少お金が掛かっても相続登記は早めにやっておいた方がよいと思います。

審査には半年から1年掛かると言われていますので、その間に、災害が起きて所有者に連絡しようと思ったけど、未登記で連絡がとれなかったとなると大変なことになります。

最近は災害も増えていますので、なお一層この点は注意したほうがよいです。

モノの条件(対象となる土地)

制度が利用できる土地は、国の審査に合格した土地です。

国の審査基準では、次のような土地が不合格になります。

門前払いされる土地

  1. 建物がある土地(更地しないとダメ!)
  2. 担保に入っている土地、貸している土地
  3. 地元の方が利用している土地(通路、墓地、境内地、水路等)
  4. 土壌汚染がある土地
  5. 境界が不明確な土地等

事案ごとに判断される土地

  1. 崖地
  2. 残置物(例:放置自動車、果樹や竹等)がある土地
  3. ゴミ等が埋まっている土地
  4. 公道までの通路がない土地等
  5. その他(災害・獣害危険区域、賦課金が必要な土地改良区等)

なお、これらの土地は、事案ごとに審査されます。

そのため、いずれかに該当する場合でも管理や売却に支障がなければ、審査に合格します。

法律専門家の中には「審査基準が厳しく、審査に合格する土地はない」と言う方がいます。

しかし、これは間違いです。

そもそも、国が土地の要件で申請を却下したり、不承認とするためには、それ相応の理由が必要です。

なぜなら、この制度は最終的に裁判所で白黒付けることができるのですが、裁判になった際に、客観的な証拠を出して、却下要件に該当するといえないと国が負けてしまうからです。

また、実際検討していくと、問題になる要件は限られています。

あきらめず、どうやったら審査に合格するか?という視点を持って不動産に向き合ってください。

ちなみに、国庫帰属制度で問題になる条件の一部には一見してわからない地雷のような要件があります。

私への相談者の中にも、その地雷の要件に気づかず、申請直前に国庫帰属制度が使えないことが判明した方がいます。

申請準備のために掛けた新幹線代や現地調査費が全て無駄になりました。

もちろん、今から、そういった地雷ポイントも丁寧に解説します。

なお、制度開始後の実際の運用については、順次、当サイトでも紹介させていただきます。

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山林や農地(田畑)を相続土地国庫帰属制度で国に返せる?

なお、よくある質問として、「山林や農地(田・畑)でも使えるの?」というご質問をいただきます。

いずれも利用可能です。

とりわけ、農地については、国庫帰属制度がおすすめです。

ただし、農地の中でも、青地と呼ばれる農業が盛んな地域の農地は申請が認められないケースが多いので注意してください。

これら山林や農地に関する留意点については、この点は次の記事をご参照ください。

【Q&A】なぜ山林を相続土地国庫帰属制度で手放すことが難しいと言われるのか?
【Q&A】相続土地国庫帰属法を使うなら農地がオススメ?弁護士が解説

相続土地国庫帰属法は原野商法の救世主?

最近、相続した原野を手放したいという相談が非常に増えています。

原野商法の被害にあった方のお子さん達がちょうど相続問題に直面しているためです。

このような方にとって相続土地国庫帰属制度は救世主になるのでしょうか?

私見ですが、相続土地国庫帰属制度は原野商法の救世主になりうる制度だと考えています。

この点は次の記事で詳細に解説していますのでご興味がある方はご覧ください。

別荘地は相続土地国庫帰属法で手放せる?

親世代が購入した使わない別荘地を相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらうことは可能でしょうか?

結論としては、可能です。

ただし、注意点が主に3点あります。

  1. 更地になっていること(建物がある場合は解体が必要)
  2. 管理費の清算について管理会社ともめないこと

これらに問題があると、国の審査に合格できない可能性が高まります。

気になる方はご自身の物件を一度確認してみください。

建物がある土地

まず、建物がある土地は申請ができないとされています。

建物があるとダメな理由

建物は、一般に管理コストが土地以上に高額です。

老朽化すると、管理に要する費用や労力が更に増加するだけでなく、最終的には建替えや取壊しが必要になります。

このように建物は通常の管理・処分に多大な費用・労力を要することが明らかです。

そのため、建物が存在する土地は、承認申請をすることができません。

なお、山のような広大な土地の一部に建物が存在する場合であっても申請はできません。

建物を解体すべきか?

少し厳しすぎる気もしますが、建物がある場合、建物の取壊しが必要になります。

もっとも、本当に、取壊しするかは慎重に判断してください。

なぜなら、それがどんなボロ物件でも建物があれば、引き取ってくれる方が見つかる場合があるからです。

値段さえ気にしなければ、引き取り手が見つかる場合も少なくありません。

最近は、ボロ物件を売買できるマッチングサイトも増えています。

私であれば、建物があれば、国庫帰属制度は使いません。

むしろ、空き家バンク等のマッチングサイトなどの方法を使って引き取り手を探してみてください。

建物とは?

そもそも、国庫帰属制度でいうところの「建物」ってなんでしょうか?

「建物」とは、「屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの」です(不動産登記規則第111条)。

建物の登記は関係ありません。

登記がなくても、上記の意味での建物がある場合は却下されます。

物置小屋のような場合は、建物には該当しない場合があります。

ただ、この場合、地上に存する工作物として管理に過分の費用又は労力を要するかどうかによって、承認の可否を判断することとなります。

法務省の内部文書では、建物か工作物か迷う場合は工作物と判断して、管理や処分が大変かについて客観的な根拠があるかを審査することになっています。

建物の”登記だけ”が残っている場合

あと、時々あるのですが、建物は解体済みなのに登記だけ残っているということがあります。

この場合、滅失登記という手続が必要です。

もっとも、滅失登記が未了でも、相続土地国庫帰属制度の申請は却下されません。

申請者側で滅失登記がされない場合は、最終的に国の方で滅失登記を行うことになっています。

ただし、滅失登記自体は義務ですので、すみやかに行うことが望ましいです。

担保権や使用収益権が設定されている土地

次に、担保権や使用収益権が設定されている土地も引き取りの対象外です。

平たく言うと、誰かに貸している土地やお金を借りた際に担保に入れた土地がこの要件に抵触します。

もう少し詳しく説明します。

まず、ここでいう使用収益権とは、賃借権、地上権、地役権、入会権、森林経営管理法の経営管理権等があります。

要は所有者以外の誰かが使っている場合です。

例えば、農地の場合、地元の農家さんに貸していることがあると思います。

この場合は賃借権が設定されていることが多いです。

こういった場合は、使っている方から土地を返してもらってください。

登記がなくてもバレますので気を付けてください。

なお、賃借権が設定されている場合でも、登記がされていないケースが結構あります。

登記されていないからバレないだろうというのは間違いです。

例えば、農地の場合、法務局で農業委員会に照会を掛けますので早々に分かります。

また、法務局の方で、近隣住民や隣接地所有者へのヒアリングで判明する場合もあります。

その際、「あの土地は、●●さんが使っているよ」等の形で情報提供がされる可能性があります。

この場合は、申請者から賃借権等がないことを証明する書類(上申書)を提出する必要があります。

仮に説明ができたとしても、こういった点が明らかになると法務局も審査を慎重に進めますので、審査に時間が掛かる可能性が出てきます。

できるだけ申請前に土地をキレイにしてから申請してください。

土地内に電柱・電線がある場合

また、土地内に電柱があったり、土地の上空や地中に電線が通っていることがあります。

この場合、法的には、賃借権や地役権という権利が設定されていることがあります。

もっとも、法務省によると、自治体等が電柱を設置するために、土地のごく一部に利用権を設定している場合、一般的には「使用収益権」に該当しないこととされています。

例えば、自治体がマンホールや電柱を設置するためにごく一部に利用権を設定している場合は、「使用収益権」に該当しません。

もちろん、設置されている物があることで土地の管理や処分に過分の費用を要する場合は別ですが、直ちに却下にならない点は注意してください。

他方で、電線のために地役権が設定されている場合は却下される可能性があります。

電柱・電線があるから直ちにダメということではありませんので、該当がある場合は法務局の事前相談の際に確認することをおすすめします。

なお、近年は、電柱がある山を購入して賃料収入を得たいという方が増えてきましたので、そういった方にお譲りすることもご検討ください。

担保権が設定されている場合

次に、担保権が設定されている場合ということで、ここでいう担保権とは、抵当権、質権、先取特権等があります。

また、いわゆる譲渡担保権(所有権を担保目的で移すもの)についても、担保権に該当します。

なお、登記がされているか否かにかかわらず、これらの権利が設定されていることが発覚した場合は引き取りの対象外になります。

ご相談でよく見るのが、明治時代や大正時代に設定された抵当権が残っているケースです。

このような場合、債務がすでに完済されていたり、消滅時効が完成していたりすることがあります。

そのため、現実的には、抵当権が行使される可能性は低いです。

もっとも、相続土地国庫帰属制度では、抵当権の登記がある場合は承認申請をすることができません。

そのため、古い抵当権が残っている場合は、専門家(司法書士等)に依頼して登記を抹消してもらう必要があります。

その他(買戻特約、差押登記、仮処分の登記)

このほかにも、買戻特約、差押登記、仮処分の登記、譲渡担保権の登記等が残っていることがあります。

こういった登記がある場合も申請が却下されるため、登記簿を見て該当するものがないかをチェックすることが必要です。

地元の住民等が利用する土地(通路、墓地、水路、境内地等)

次に、地元住民の方などが利用する土地も引取り不可とされます。

このような土地を国が引き取ると、その管理に当たって使用者等との調整が必要であるなど、通常の管理・処分に多大な費用・労力を要するが明らかだからです。

「他人による使用が予定される土地」の具体例としては、以下の土地があります。

  1. 現に通路として利用されている土地
  2. 墓地
  3. 境内地(けいだいち※ざっくりいうとお寺の土地等)
  4. 水道用地、用悪水路又はため池として現在使用されている土地

それぞれ見ていきましょう。

現に通路として利用されている土地※最も問題になりやすい

まず、このなかで最も問題になりやすいのが、現に通路として利用されている土地です。

土地の地目が公衆用道路になっている場合は特に注意してください。

また、別荘地や宅地などを所有している方は、要注意です。

なぜなら、宅地と一緒に隣接する道を所有していることがあるからです。

しかも、相続人の方がその通路の存在を知らないということもあるため、やっかいです。

この場合、その隣接する道が、この要件に該当する可能性があります。

また、公図を見て細長い通路のような形をしている土地があれば、注意してください。

もっとも、このような土地でも、現在、通路や道路として使用されていない場合は申請は却下されません。

原野商法で騙されて買った土地や限界ニュータウンのような地域では、公図上、道があっても、現地は道として利用されていないというケースもあります。

法務局で不明点が残る場合は、地元住民にヒアリング等が行われます。

なお、通路として利用されていない場合でも、「共有」になっているときは要注意です。

この場合、共有者全員で申請する必要があるためです。

実際、宅地本体は国庫帰属制度の要件を満たすのに、通路があって、そちらが要件を満たさないため結局申請を諦めたという方も少なくありません。

(こういった場合、山林や別荘地を扱っているマッチングサイトに登録してみることも一案です。)

ご懸念がある場合は、登記簿を確認して共有になっていないか確認してみましょう。

【コラム】山林の場合

山林の場合、林道や登山道が通っていることがあります。

これらも実際に利用されている場合は、「通路」に該当し、却下される可能性があります。

もっとも、作業道や管理歩道などは、土地の管理に必要な道ですので、通路には該当しません。

墓地

次に、土地内に墓石がある場合等も申請が却下されます。

登記簿の地目欄で「墓地」となっていて、現地に墓石がある場合が典型例です。

この場合、都道府県に墓地としての登録を確認してみましょう。

仮に登録がある場合は、申請が却下されます。

その場合、墓地の廃止の手続を行い、墓石も撤去しましょう。

廃止の手続をしても、墓石が残っていると、不承認とされる可能性があるため、注意してください。

境内地

同様に、境内地についても地目上、境内地となっていれば、要注意です。

具体的には次のような土地です。

  1. 本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)
  2. 前号に掲げる建物又は工作物が存する一画の土地(立木竹その他建物及び工作物以外の定着物を含む。以下同じ。)
  3. 参道として用いられる土地
  4. 宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地(神田、仏供田、修道耕牧地等を含む。)
  5. 庭園、山林その他尊厳又は風致を保持するために用いられる土地
  6. 歴史、古記等によつて密接な縁故がある土地
  7. 前各号に掲げる建物、工作物又は土地の災害を防止するために用いられる土地

ただし、実際に境内地として利用されていなければ、却下はされません。

逆に、地目が境内地になっていなくても、実際に境内地として利用されている場合は却下される可能性があります。

水路

なお、水路についても、引き取りの対象外です。

土地の地目が「水道用地」「用悪水路」「ため池」になっている場合は注意してください。

ただし、水路して現在使用されていない場合は申請が可能です。

土壌汚染されている土地

次に、土壌汚染されている土地についても引き取りが認められません。

土壌汚染対策法上の「要措置区域」や「形質変更時要届出区域」に該当すると申請者の方で積極的に汚染がないことを証明する必要があります。

そのため、ご懸念がある場合は、検索サイトで「<市町村名> <要措置区域>」「<市町村名> <形質変更時要届出区域>」と検索してみてください。

ただ、結論としては、この要件が問題になることは少ないです。

工場跡地でもない限り、土壌汚染が問題になることは少ないためです。

申請時に土壌汚染がないことを証明する必要もありません。

そのうえで、一応見ておこうと思いますが、まず、土壌汚染の基準ですが、土壌汚染対策法における環境省令で定める基準と同じです。

具体的には、おそれがある有害物質として土壌汚染対策法施行令(平成14年政令第336号)で規定されている26物質があります。

この26の特定有害物質は、土壌汚染対策法施行規則(平成14年環境省令第29号)において、

①第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)

②第二種特定有害物質(重金属等)

③第三種特定有害物質(農薬等)

の3種類に分類されています。

物質ごとに土壌溶出量基準や土壌含有量基準等の基準値が設定されています。

(出典:土壌汚染対策法施行規則別表第四(第三十一条第一項関係))

もっとも、すべての事案で、土壌汚染がないことを調査したり、証明する必要はありません。

法務局の方でも、すべての案件で、現地の土を掘り返して調査することは想定していません。

現地で土地の変色や異臭等があり、明らかな異常が認められる場合もあり得ます。

このように土壌汚染の疑いが生じた場合に、申請者に確認が入ります。

そこでの弁明がうまくいかないと、土壌汚染の正式調査が求められることがあります。

この土壌汚染の調査を拒否すると、申請が却下される可能性が出てきます。

ただし、工場跡地等のように土壌汚染が疑われるケース以外は、土壌汚染の調査が必要なケースは少ないと考えられます。

【コラム】放射性物質がある土地

なお、近いものとして、放射性物質が存在する土地、避難指示区域内の土地、ダイオキシンなど、特定有害物質ではないものの人体に有害と思われる物質が存在する土地等があります。

もっとも、これらに該当することをもって直ちに却下されるわけではありません。

境界不明地等(一番論点になりやすい要件)

「境界が明らかでない土地」についても引取の対象外です。

あなたの相続した土地の境界は明確になっていますか?

なかなか自信をもってYESと言える方は少ないのではないでしょうか。

そのような背景もあり、この要件を厳しいという専門家が多いです。

しかし、間違いです。

この要件が一番誤解しやすい要件であるため、丁寧に解説していきます。

まず、この要件の典型例として隣地所有者との間で境界争いがある場合が挙げられます。

また、申請者以外にその土地の所有権を主張する者がいる土地についても引取の対象外です。

他にも、図面と現地の状況が大幅に食い違う場合や現地で境界点が確認できない場合も引取対象外です。

こういった土地は、国が管理するうえで支障が生じることが明らかですので、引き取りの対象外とされました。

ここまでの説明を聞くと、「やっぱり要件が厳しいのでは?」と思う方が多いと思います。

専門家が誤解するくらいですから、当然のことです。

とりわけ、山林では、境界がわからないことが多いため、このように言われることが多いです。

しかし、詳細に見ていくと必ずしも厳しいものではありません。

この点は、審査の流れを見ると分かります。

相続土地国庫帰属制度における境界の判断方法

相続土地国庫帰属制度における境界の明確さは、主に次の2つ点から判断されます。

  1. 提出した境界の図面・写真と現地にズレがないか?
  2. お隣さんから、異議が出ないか?

まず、①提出した境界の図面・写真と現地にズレがないか?については、法務局の職員が現地に調査に入った際に現地の境界標と図面が一致している必要があります。

現地の状況が明らかに図面などと食い違う場合は申請が却下されます。

境界標がない場合、境界点を明らかにする目印を立てる必要があります。

ちなみに、境界標を自分で打ち込んだことがある人はいますでしょうか?

いないですよね。

この辺は一般の方にはかなり抵抗感があると思います。

しかし、国庫帰属制度の申請時に示す境界は、紅白ポール、プレートなどの設置で差し支えありません。

もちろん、一時的なものではだめですが、安定的に杭が打てるのであれば、ホームセンターで買ってきたものでも問題ないのです。

国が審査時や国庫帰属時(承認時)に判別できるようにしておきましょう。

以下は、法務局が推奨している杭の例です。

(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内」より)

なお、一般的に、境界を明確化する場合、隣の土地の所有者と境界について合意した書面(境界確定書等)や境界確定図(測量図)を作成することがあります。

不動産の売買をしたことがある方であれば、見たことがあるかもしれません。

しかし、国庫帰属制度では、こういった図面を必要書類ではありません。

ただ、もし境界確認書等を保有している場合は、申請時に写しを添付することが推奨されています。

その方が審査が早く進みますから、お手元にあれば提出しましょう。

(過去に境界確認を行っていないか書類を確認してみてください。)

次に、②お隣さんから、異議が出ないか?については、法務局からお隣さん(共有地の場合は共有者全員)に手紙を出すことで確認します。

回答期限は2週間です(海外の場合は4週間)。

2週間経っても、返信がない場合、再度、通知をします。

この回答期限も2週間です。

これら2回のお手紙に対して、回答がなかった場合は、「異議なし」として審査が進められます。

お手紙が届かない場合も同様です。

ただし、例外として、現地調査の際に近隣住民から境界について異議が出た場合は、追加の対応が必要になる可能性があります。

この点も意外に思いましたか?

普通の不動産取引で、こんな適当な方法で境界を確認したと言えば、間違いなくクレームが入ります。

しかし、国庫帰属制度では、明確な異議が出なければよいのです。

異議が出ても具体的な理由が不明な場合は、争いなしと判断されます。

ただ、逆に言えば、明確な異議が出てしまうと審査がストップしてしまいます。

そのため、申請前に、お隣さんに手紙を送っておくとスムーズに進みます。

法務局から、いきなりお手紙が来れば、誰でもびっくりしますよね?

そのため、あらかじめ、国庫帰属制度を申請する旨を伝える手紙を送っておくと丁寧です。

もしかすると、国に返すなら、こちらで引き取ろうか?と言ってくれるかもしれません。

実際、そのような形で引き取りが決まることがあります。

私も経験があります。

丁寧にコミュニケーションをすれば、異議が出ることは少ないです。

国に返したい土地=いらない土地のお隣はいらない土地ということが少なくないため、積極的に異議を言う人が少ないんですね。

ただ、それでも、もし、お隣さんから異議が出た場合はどうなると思いますか?

安心してください。

この場合でも、直ちに却下になりません。

申請者の方で、お隣さんと調整することになります。

調整の結果、争いがなくなった場合は、引き続き審査が進みます。

ただし、猶予期間は2か月です。

遠方で調整に時間が掛かる可能性がある場合は、申請前にお手紙を出しておくことがよいでしょう。

なお、お隣さんが住所変更登記等をしていないため、お手紙が届かない場合があります。

このような場合、法務局の方で転居先の調査をすることはありません。

周辺住民の方等に聞いて問題がなければ、異議なしと判断されて、審査が先に進みます。

この辺は非常に重要な論点ですが、内容も難しいため、境界のことがよくわからないという方は無料相談をお申し込みください。

ただし、無料相談は予告なく終了することがあります。あらかじめご容赦ください。

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なお、誤解されやすいのですが、いわゆる筆界未定土地又は地図がない土地でも申請が認められる可能性はあります。

(出典:福岡法務局「『筆界未定地』について」)

あくまでも、申請者から土地の範囲が明確に示され、その土地の範囲について隣地所有者と認識が一致していれば争いがないものと判断することになります。

そのため、筆界未定又は地図がないことのみをもって、境界が明らかでない土地その他所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地として承認申請を直ちに却下することにはなりません。

また、法務局で発行してもらえる公図や地積測量図とズレがあっても直ちに却下されるわけではありません。

不法占拠者がいる場合

なお、境界不明と似て非なる問題として、不法占拠者や越境がある場合があります。

もし、現地に、不法占拠者がいる場合、その不法占拠者が時効という制度で所有権を取得していることがあります。

仮に時効が問題になる場合は、「所有権の存否又は帰属について争いがある土地」に該当し却下される可能性があります。

現地を確認して、第三者による使用の形跡がないかチェックしてください。

崖地

次に、崖地がある場合、状況によって引き取りが認められないことになっています。

この要件も誤解が多い要件です。

まず、国庫帰属制度でいうところの「崖」に該当するのは、勾配が30度以上で高さが5メートル以上である必要があります。

これに満たない場合はそもそも崖地になりません。

そのうえで、上記の意味での崖地に該当しない場合は、国土地理院で公開されている「重ねるハザードマップ」を見てみてください。

特に、申請地が急傾斜地崩壊危険区域等に該当する場合は要注意です。

もちろん、この区域に該当するからといって絶対的に国庫帰属が認められないことではありません。

というのは、引き取りが認められないのは、崖の中でも、周囲に危険を及ぼすものです。

具体的には、民家、公道、線路等が付近に存在し、擁壁工事を実施しなければ、近隣住民等の生命身体に被害が及ぶことが客観的かつ具体的に認められる場合には、国庫帰属が認められないことになります。

他にも、①亀裂が入った崖、②小石が落ちてくる崖、③濁った水が出る崖等は危険な崖の可能性があります。

このような土地に該当するか否かは、法務局が地方公共団体や地方整備局の砂防部局等に意見を確認することになっています。

懸念がある方は、あらかじめ地方公共団体や地方整備局の砂防部局等に意見を聞いてみましょう。

逆に言えば、そういった危険がない場合はこの要件は問題になりません。

例えば、民家等が近くにない山林の場合、山林内に多数の崖があっても、擁壁工事等の必要はないため、問題になりません。

そのため、まずは、近くに民家、公道、線路等がないかが大事なポイントになります。

なお、仮に民家等が近くにあっても、擁壁工事が既になされている場合は、引き取りが認められる可能性があるため、合わせてこの点も確認しておきましょう。

(出典:神奈川県HP│急傾斜地崩壊防止工事についてhttps://www.pref.kanagawa.jp/docs/w5k/cnt/f507/p6337.html)

土地の管理・処分を阻害する有体物(例:放置自動車、樹木等)が地上にある土地

土地上に残置物がある場合も、状況によって引き取りの対象外です。

みなさん、残置物というと、どういったものをイメージしますか?

不法投棄されたゴミあたりがイメージしやすいでしょうか?

国庫帰属制度では、以下のような物がある引き取り不可とされていおます。

  1. 果樹園の樹木
  2. 樹木のうち、民家、公道、線路等の付近に存在し、放置すると倒木の恐れがある枯れた樹木や枝の落下等による災害を防止するために定期的な伐採を行う必要があるもの
  3. 竹のうち、放置すると周辺の土地に侵入するおそれや森林の公益的機能の発揮に支障を生じるおそれがあるために定期的な伐採を行う必要があるもの
  4. 過去に治山事業等で施工した工作物のうち、補修等が必要なもの
  5. 建物には該当しない廃屋
  6. 放置車両

ただ、これらがあれば即アウトということではありません。

残置物があることで管理や処分に過分な費用が掛かることを国側で具体的・客観的に言える必要があります。

例えば、①果樹園の樹木については、一般的に、放置しておくと鳥や獣や病害虫の被害の要因となる関係で、定期的に枝の剪定や農薬の散布などの作業が必要になるため、こういった土地は引取の対象外になる可能性が高いといえます。

他方で、森林において樹木があるのはむしろ通常ですので、安全性に問題のない土留めや柵がある場合などには、引取が認められることがあります。

②民家、公道、線路等の付近に存在し、放置すると倒木の恐れがある枯れた樹木や枝の落下等による災害を防止するために定期的な伐採を行う必要がある樹木については、具体的には、カシノナガキクイムシによる被害木などが想定されています。

カシノナガキクイムシによる被害木は、夏に真っ赤に枯れ上がるといわれています。

(出典:東北森林管理局HPより/https://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/syo/asahi/siryou/kasinaga.html)

また、樹木自体は切られているものの切り株が残っている場合は、基本的には残置物に該当しないと考えられます。

③放置すると周辺の土地に侵入するおそれや森林の公益的機能の発揮に支障を生じるおそれがあるために定期的な伐採を行う必要がある竹がある場合も国庫帰属が認められていません。

竹は、繁殖力が非常に強く周囲の土地に侵入する可能性が高い場合があるためです。

また、竹の根は通常の樹木と比べて音が地表に近い部分で広がるため、森林の公益的機能の発揮に支障が生じる可能性が高いため、引き取りの対象外とされています。

④過去に治山事業等で施工した工作物のうち、補修等が必要なものについても引き取りの対象外です。

こういった工作物は維持管理に多大な費用が掛かるためです。

⑤建物には該当しない廃屋についても対象外です。屋根が崩壊するなどして廃屋になっている場合、廃屋の撤去や維持・管理にかなりのコストが掛かるためです。

⑥放置車両がある土地も引き取りの対象になりません。放置車両の撤去に費用を要するためです。

注意が必要なのは、これらに該当すれば、国庫帰属が絶対的に認められないというわけではないという点です。

国側で管理や処分が大変であることを客観的かつ具体的な根拠をもって示せなければなりません。

そのため、逆に、土地に有体物があっても、以下のような場合であれば、直ちに却下されることはありません。

  1. 宅地に樹木が存在するが、通常の管理または処分に影響がなく、隣接地にも特段の影響を及ぼす可能性が低い場合
  2. 田畑に通常の管理または処分に影響しない小屋が存在する場合
  3. 森林に通常の管理または処分に影響しない樹木がある場合

埋設物がある土地

埋設物等の有体物が地下にある土地についても、状況次第で引取不可になります。

地下に埋まっているというと、みなさんは何をイメージしますか?

徳川埋蔵金でも埋まっていれば、よいですが、そんなことはないでしょう。

国が引き取り不可としている埋設物としては、次のようなものがあります。

  1. 管理を阻害する産業廃棄物や屋根瓦などの建築資材(いわゆるガラ)
  2. 地下にある既存建物の基礎部分やコンクリート片
  3. 現在使用されていない古い水道管、浄化槽、井戸
  4. 大きな石

こういった土地は、その管理・処分に制約が生じ、その撤去のために多大な費用がかかる上に、場合によっては周囲に害悪を発生させるおそれがあるためです。

なお、③古い水道管、浄化槽、井戸については、現在も使用が可能な水道管やガス管などの一般的なものは、該当しない可能性があります。

また、埋設物の有無の判断方法ですが、申請地の過去の用途の履歴について、申請者の認識や地方公共団体が保有している情報等を調査することにより、判断することが想定されています。

そのうえで、現地調査の際に、不自然な掘り返し等がないかを確認することになります。

なお、埋設物というと、弁護士は、埋蔵文化財包蔵地を思い浮かべます。

これは地下に土器や石器等が埋まっている可能性があるというエリアという意味です。

もっとも、埋蔵文化財包蔵地に該当する場合であっても、直ちに国庫帰属が認められないというわけではありません。

国の方で、客観的かつ具体的に、管理・処分が困難な埋設物があることを示さなければなりません。

もし、国の方で懸念が生じた場合、申請者に連絡が行きます。

申請者は上申書を提出し、地下に管理・処分が困難な埋設物がないことを説明する必要があります。

このような上申書が提出されたにもかかわらず、国の方で疑義が払拭できない場合は、さらに追加の調査(専門業者による地下埋設物調査報告書)を求められることがあります。

ただ、この辺も問題になる土地はごく限られたものと思われます。

公道に通じない土地

隣地所有者等との問題を解決しなければ利用できない土地も引取りの対象外です。

具体的には2つの類型があります。

  1. 公道までの通路がなく、かつ、実際に公道に出られない土地
  2. ①以外で所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地(軽微なものを除く)

こういった土地は、管理を行う上で障害が生ずるおそれが高いからです。

②の具体例としては次の3つがあります。

  1. 所有者以外の第三者に不法に占有されている土地
  2. 隣接地から継続的に流水がある土地
  3. 管理費が発生している別荘地

なお、一見これらに該当するように思われても、第三者による立ち入りが一時的である場合は問題ありません。

生活排水等の流入が軽微な場合も同様に問題ありません。

別荘管理費についても、必ず引取不可とされるわけではありません。

引き取りが不可とされるのは、国庫帰属後に管理会社との紛争が確実と見込まれる案件です。

具体的には、管理会社が国庫帰属後に別荘地の管理のために、国に管理費を請求する態度を明確にし、かつ、国が管理を支払わない場合には、国庫帰属した土地の使用を制限する旨を表明している場合です。

逆に、管理会社が倒産している、管理会社から10年以上連絡がない等の事実関係がある場合は、申請が認められる可能性があります。

より確実なのは、管理会社の見解を聴取することです。

例えば、以下のような内容が聴取できればよいです。

  1. 管理委託契約上、管理費用の支払義務が存在しないこと
  2. 管理会社から国に管理費用を請求することがないこと

申請者からの提出資料により、管理会社からの請求がないと判断されれば、審査の際に国(法務局)から管理会社に問い合わせなどは行われませんので、申請者の方でできる限りの準備ができればベターです。

その他

 最後に、その他として次のような土地が引取りの対象外とされています。

  1. 土砂崩落、地割れなどに起因する災害により、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命、身体又は財産に対する被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微なものを除く。)
  2. 鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地(軽微なものを除く。)
  3. 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備を要する森林(軽微なものを除く。)
  4. 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
  5. 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

災害危険区域

例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 土砂の崩壊の危険のある土地について崩壊を防ぐために保護工事を行う必要がある場合
  • 大きな陥没がある土地について人の落下を防ぐためにこれを埋め立てる必要がある場合
  • 大量の水が漏出している土地について排水ポンプを設置して水を排出する必要がある場合

これらに該当するかは、法務局の現地調査後に関係機関に照会をすることで確かめることになっています。

もっとも、地割れや陥没があり、明らかに危険な状態であることがわかれば、その時点で却下される可能性はあります。

なお、ここで求められている危険性は、抽象的な危険性では足りず、客観的かつ具体的なものでなければなりません。

また、工事が必要という点についても、単に、将来工事の必要性があるという抽象的なものではダメです。

災害を防止するための工事が必要であることについて、具体的かつ客観的に証明され、かつ、その工事に必要な費用の概算が軽微ではないことが示される必要があります。

森林病害虫がいる土地

これは、病害虫を駆除する必要がある土地を意味しています。

具体的には、松食い虫などの森林病害虫が生息している場合が念頭に置かれています。

(出典:関東森林管理局https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/policy/business/hogozigyou/matsukui.html)

そのため、主に問題になるのは、森林や原野です。

なお、生息する動物の危険性が低い、又は危険であっても生息する数が極めて少ないなどの理由により、被害の程度や被害が生ずるおそれの程度が軽微であるような場合は、引き取ることができます。

単に、熊が生息している可能性がある、イノシシが出没したらしい、スズメバチの巣があるらしいという抽象的な情報であれば、問題ありません。

審査の判定手法としては、次の点を確認します。

  • 農地の場合:周辺の地域における農用地の営農条件に著しい支障が現に生じているかどうか
  • 山林の場合:森林病害虫等の発生により駆除やまん延防止のため措置を現に必要としているかどうか

国による森林整備が必要な森林(山林)

こちらは、主に森林として利用されている土地が問題になります。

その中でも、国による整備(造林、間伐、保育)が必要な森林(山林)は引き取りの対象外とされています。

具体的には、次のような土地が該当します。

  1. 人工林のうち、間伐の実施を確認することができないもの
  2. 天然林のうち、標準伐期齢に達していないもので、かつ、一定の生育段階に到達するまで更新補助作業が生じる可能性があるもの

人工林とは、主に木材の生産目的のために、人の手で種を播いたり、苗木を植栽して育ている森林をいいます。

天然林とは、自然の力で育ち、人手が入っていないか、長い間、人手の入った痕跡がない森林をいいます。

標準伐期齢(ひょうじゅんばっきれい)は、概ねスギで35~50年、ヒノキで45~60年、カラマツで30~40年とされています。

更新補助作業とは、樹木の世代交代のため、目的を達した成熟林分を伐採利用して、後継林分を育てるために実施する発芽条件の改善、稚樹の補充等の作業をいいます。

この要件に該当するか否かの確認方法としては、まず、市町村に問い合わせをして、市町村森林整備計画の対象地になっているかを確認します。

そのうえで、対象になっている場合は、以下を確認します。

  1. 造林樹種、造林の標準的な方法その他造林に関する事項
  2. 間伐を実施すべき標準的な林齢、間伐及び保育の標準的な方法その他間伐及び保育の基準

これらの基準に照らして、追加的に造林、間伐又は保育を実施する必要があると認められるか否かが判断基準となります。

ただし、一般の方がこれらを判断するのは難しいといえます。

市役所の森林関係の部署や森林組合などに聞いてみることをおすすめします。

なお、国の審査の際は、森林管理局が現地を調査することになっています。

土地改良区の賦課金が発生している農地等

典型的には、水利費等の費用(賦課金)が発生している土地改良区内の農地です。

下水道の受益者負担金が発生している土地も該当します。

金額にかかわらず、これらの費用が発生している場合には、土地を引き取ることはできません。

金銭債務を消滅させた場合は引き取りの可能性が出てきます。

また、決済金という脱退のためのお金を支払うことを条件に、国が引き取った後に管理費を国に請求しないという確約が得られれば、引き取りの可能性も出てきます。

しかし、こういった対応が確実に認められるかは現時点で不透明です。

農地に関してはこの要件が一番のネックになります。

カネの条件(手数料・負担金)――相続土地国庫帰属制度の費用

相続土地国庫帰属制度の利用にあたっては、次の3つのお金が必要です。

  1. 審査手数料
  2. 負担金
  3. 専門家報酬(依頼する場合のみ)

①審査手数料

まず、①審査手数料については、1筆1万4千円です(土地は1筆2筆と数えます。)。

審査手数料は、申請書に収入印紙を貼って納付します。

収入印紙は郵便局で購入可能です。

なお、納付後は、審査手数料は返還されません。注意してください。

申請を取り下げた場合や、審査が不合格になった場合も返還されません。

審査手数料自体は、低額に抑えられていますが、筆数(土地の数)が多くなると費用も馬鹿になりません。

その場合は、合筆という複数の筆を一つにまとめる手続を行って

、筆数を減らすことも検討してみてください。

②負担金

また、審査に合格した際は、10年分の管理費用を『負担金』という形で納める必要があります。

具体的には、原則20万円としつつ、①宅地、②農地、③山林については、面積に応じて負担金が変動することになっています。

例えば・・・

  1. 住宅地の宅地の場合…200㎡で793,000円(なお、100㎡だと約55万円)
  2. 優良農地等の場合…200㎡で450,000円(500㎡だと約72万円、1,000㎡だと約110万円)
  3. 山林の場合…200㎡で221,800円(1000㎡で約26万円、10,000㎡(1ha))

となります。

より具体的な金額を知りたい方向けに、次の記事で詳細を解説していますので、こちらも必ず読んでください。

③専門家報酬(依頼する場合のみ)

10万から50万前後掛かると思っておいたほうがよいでしょう。

詳細は以下の記事で解説しています。

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最後に――なぜ利用条件があるの?

このように「ヒト」「モノ」「カネ」の観点から様々な条件が付されたのは、なぜでしょうか?

それは、国が引き取った土地は税金で管理するからです。

無条件に土地を引き取ると税金の負担が重くなるため、審査基準があるのです。

また、国が無条件に土地を引き取ると、土地所有者が「どうせ国が引き取ってくれるなら、管理は適当でいいや」と土地の管理をおろそかにする可能性があります(モラルハザードといいます。)。

このような理由により、先に述べた様々な利用条件が定められることになりました。

先祖から引き継いだ土地ですから、国に返す際はキレイにして返しましょうということです。

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