【速報】原則20万で土地を国に?相続土地国庫帰属法政令案がついに公表!【弁護士が徹底解説】

制度の解説

はじめに

 2022年8月4日、相続土地国庫帰属法の政令案が公表され、国民の意見を聴くためのパブリックコメントの手続に入りました。

 この政令案は、①国庫帰属の承認をすることができない土地の要件や②負担金の算定方法等を定めるためのものです。

 通常、パブリックコメントの際に公表された政令案が大きく変更されることは稀ですので、今回解説する内容が最終的に施行される可能性が高いといえます。

 今回はこの政令案を詳しく解説していきたいと思います。

 なお、根拠資料等の明示がない部分は、筆者の私見ですので、その点はご留意下さい。

土地の要件

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239525

相続土地国庫帰属法では、国が引き取りを認めない土地をブラックリストとして定めていましたが、その中で、法律では詳細は決めずに、政府が決める政令で詳細を定めるとしたものがありました。今回の政令案では、このブラックリストの詳細が定められています。

まず、おさらいとして、相続土地国庫帰属法で定められていたブラックリストを見てみましょう。

①申請が却下される土地(門前払いされるもの)
 建物の存する土地
 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
 土壌汚染対策法…第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

②申請が棄却される土地(ケースバイケースで判断される土地)
 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

赤太字で記載したものが、政令に詳細を定めることになっています。

なお、詳しく見ると、政令ではなく、法務省令で定めるものがありますが(①四)、こちらについては、まだ公表されていませんので今後の動向を見守る必要があります。

以上を整理すると、今回の政令で定められるのは
①他人による使用が予定される土地(上記①三)
②崖の基準(上記②一)
③係争地(上記②四)
④その他(上記②五)
となります。

それぞれ細かく見ていきましょう。

他人による使用が予定される土地

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239525

まず、相続土地国庫帰属法2条3項3号に規定する「通路その他の他人による使用が予定される土地」の類型として、次のものが政令案で定められています(政令2条関係)。

ア 現に通路の用に供されている土地
イ 墓地内の土地
ウ 境内地(けいだいち)※ざっくりいうとお寺の土地等
エ 現に水道用地、用悪水路又はため池の用に供されている土地

これらの土地は、地域住民の方々が広く利用する土地で、国に帰属させてしまうと、国の方で地域住民の方々との調整が必要になるため、政令で除外されたものと思われます(部会資料48・12頁)。

なお、文言をよく見ると、「現に…用に供されている土地」という表現になっているもの(上記アとエ)と、そうなっていないもの(上記イとウ)があります。

例えば、通路やため池等の上記に掲げられた土地であっても、現在は荒廃して通路やため池等として機能していないものがありますので、こういったものは、「現に…用に供されている」といえないため、直ちに申請が却下されることはないと思われます。

こういった用途の土地は必ずしも多くないと思われますが、事実上通路として利用されている場合等は、アに該当することもありうるため、懸念がある方は、現地の使用状況を確認することをオススメします。

他方で、ア以外の土地は、登記簿の地目欄にその旨が書かれていなければ、基本的には要件に当てはまらないと思われます。

崖の基準

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239525

次に、相続土地国庫帰属法5条1項1号に規定している崖の基準については、「勾配が30度以上であり、かつ、その高さが5メートル以上である」という形で定められる予定です(政令3条1項関係)。

これは急傾斜地法で急傾斜地崩壊危険区域と定められている基準を参考にしたものです(下記イメージ図も参照)。

東京都建設局HP「急傾斜地に関する区域のちがい」参照
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/dosha_saigai/map/kasenbu0103.html

崖地になっていて、この要件に該当するか懸念がある場合は、「急傾斜地崩壊危険区域 ●県」などで検索し、管轄の土木事務所等に聞いてみるとよいでしょう。

なお、この要件に該当する崖地があれば絶対的に国庫帰属が認められないというわけではありません。

山林等のように、傾斜があることが通常で、それによって、管理コストに大きな影響がないということであれば、国庫帰属が認められることがあります。

係争地

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
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次に、係争地に関しては、次の2つが定められています。

ア 民法210条に規定する土地であって、現に同条の規定による通行が妨げられているもの
イ アのほか、所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地

民法210条は、いわゆる囲繞地通行権という権利を定める条文です。これは、他の土地に囲まれた土地(袋地)の所有者は、公道に出るために、その周りの土地を通行できるという権利です。

こういった土地についても、現に通行が妨げられている場合は、通行を妨げている人との間で調整を要するため、国庫帰属の対象外とされたということと思われます。

その他

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
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最後に、「その他」として、次のような土地が国庫帰属の対象外とされています。

ア 土砂崩落、地割れなどに起因する災害により、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命、身体又は財産に対する被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微なものを除く。)
イ 鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地(軽微なものを除く。)
ウ 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備を要する森林(軽微なものを除く。)
エ 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
オ 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

ア、イについては、国が多額の賠償責任を負う可能性があるという観点から国庫帰属対象外とされたものと思われます。

なお、アについては、単に災害のおそれがあるというだけでは、要件に該当しません。安全防止措置(軽微なものを除く)を講じる必要がある程度にリスクがある土地が対象です。また、軽微なものが除外されていますが、抽象的で国側に裁量が残る印象で、やや疑問が残ります。

ウについては、造林等に多額の費用が掛かることから国庫帰属対象外とされたと思われます。

エとオについては、文言上はわかりにくくなっていますが、土地改良区の農地等が入ってくるものと思われます。すなわち、土地改良区内の農地については、土地改良法に基づき、農地の所有者が賦課金というお金を支払う必要があります。こういった農地を国が引き受けてしまうと、国が賦課金の支払債務を負うということになる関係で国庫帰属対象外になったものを思われます。

なお、エは、国が引き取った後に賦課金が課される場合で、オは既に課されている賦課金の債務を国がする場合を定めているものと思われます。

負担金の算定方法――原則20万、但し例外多し

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239525

 次に、国庫帰属の審査が合格した後に支払う負担金の政令案について、解説したいと思います。

 相続土地国庫帰属法では、国の審査に合格した後、10年分の土地の管理費用相当額を負担金という形で納めて、はじめて国に所有権が移転する建付けになっています。

 この負担金については、政令で定めることとされていたところですが、その政令案が今回公表されました。

 具体的には、原則20万円としつつ、面積に応じて負担金が変動する土地が例外として定められています。

 例外は、①宅地、②農地、③山林に関するものがそれぞれあります。

宅地

 まず、宅地のうち、都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の土地については、面積に応じて負担金を算定します。

 市街化区域・用途地域というのは、言葉を選ばず、ざっくり言うと、街の中心部分で商業施設や住宅などが密集している場所です。こちらに該当するかは市役所の都市計画課等に確認すると教えてくれます。

 もし市街化区域・用途地域に該当する場合、負担金は、以下の表に従って計算します。

 例えば、100㎡だと約55万円、200㎡だと約80万円になります。

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
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 街の中心ですので、建物が密集しており、土地の管理もしっかりしないとトラブルや周辺への悪影響が生じやすいということで、例外として定められたのではないかと思われます。

農地

次に、農地のうち以下のものについても面積で負担金が決まる建付けになっています。

ア 都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の農地
イ 農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内の農地
ウ 土地改良事業等の施行区域内の農地

具体的には、以下の表に従って計算します。

例えば、500㎡だと約72万円、1,000㎡だと約110万円となります。

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239525

アについては、宅地と同じ理由により負担金が多くなっているものと思われます。

イとウは農業を積極的に推進している地域であり、充実した農業をするためには多くの手入れが必要ということで例外とされたのではないかと思われます。

山林

最後に、山林のうち主に森林として利用されている土地については、面積に応じて負担金が決まることになりました。

具体的には以下の表に従って決まります。

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239525

山林の場合、面積が広がると管理する木の本数も多くなりますし、境界の管理等も難しくなるため、こういった形になったのではないかと思われます。

なお、木なども少なく、原野と呼ばれる土地については、原則に戻り20万円となります。

【補足】隣接地の取扱い

なお、申請人の負担軽減を目的として、申請者は、隣接する2筆以上の土地について、一つの土地として、負担金の額を算定することを申し出ることができることとされました(政令案5条)。

そのため、1筆20万円が原則であるものの、申請する2筆が隣接する場合は、2筆20万ということになります。

法務省民事第二課「政令案における土地の要件及び負担金算定の概要」
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さいごに

 いかがでしたか?今回は2022年8月4日に公表された、相続土地国庫帰属法の政令案について解説させていただきました。

 もし、この記事が「わかりやすい」「勉強になった」と思った方はSNS等で共有していただると大変うれしいです。

 なお、相続土地国庫帰属制度の全体像については、次の記事で解説しています。

 【いつから?】令和5年4月開始!相続土地国庫帰属制度とは何か?【いらない土地を国に返す制度!?】

 また、相続土地国庫帰属制度以外の方法で土地を手放す方法については、次の記事で解説しています。

 【2022年版】いらない土地をあげたい!不要な土地を賢く売る・手放す方法5選

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